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SYU's TraveLog.
登録08.02.10
3日目・セーヌ川を走る
エッフェル塔からガラ・デ・リヨンまでは、セーヌ川をまっすぐ東に行くだけだ。
余計なことをしなければまず迷うことはない。
お気楽に自転車をこぐ光君と、不機嫌で不景気な顔をしてついていく土屋先生。
『このままでは何もおきずに今日という一日が終わってしまう、なんとかしなければ』
予定が順調に進めば、ガラ・デ・リヨンを夜の7時ごろに出発するユーロナイト(夜行列車)に乗ってヴェネツィアに行くことになる。
駅に着き、夜行に乗ってしまえばもう後はトラブルなどおきないだろう。
そうすると
『・・・退屈な一日になりそう・・・』
そんな不安(?)を胸に抱く土屋先生。
「光君、この後見るところってどこ?」
「ん?もう終わり。」
がっくりとうなだれる土屋先生。彼にとっては最悪の事態だ。
「まだ昼だけど、ユーロナイト(夜行列車)出るまではまだまだ時間があるでしょ?」
「・・・そーかも。」
「だからさぁ・・・」
「とりあえず駅についてから考えればよくない?座席の予約もしておかなきゃいけないし。」
光君の言うことももっともだ。
いつの間にか二人はシテ島のそばまで来ていたのだが・・・
「ツッチー、お腹すかない?」
食いしん坊万歳の時間か?
「あー・・・すいちゃあいるんだけど・・・このへんで僕らが食べられるものなんかないんじゃないかな?予算的に・・・」
「・・・確かに」
そんな会話を繰り広げつつ二人はかの有名なシテ島を素通りするのだった。
ちなみに、シテ島にあるノートルダム寺院は無料で見て回れるのだけどこのときの二人には知るべくもない。
シテ島には目もくれない二人だが、さすがに道端にあるものには目がついたようだ。
川沿いの道に並ぶ謎の深緑色のボックスの一団。
「ツッチー、これ何?」
「ああ、見ててごらん。しばらく走ってると開いてるのがあると思うよ。」
首をかしげる光君。
「・・・開く?」
「ん?・・・ うおおおぉぉぉ!!」
その実態は古本屋。
おおらかというか適当というか・・・
ちなみにこのあたりの露天はちゃんとパリの条例に従って設置されている。
ヨーロッパでは伝統の古いオープンカフェなどにも同様の条例が存在する。ちなみに日本では法律上の問題でオープンカフェを開くことはできない。
日本もフランスの情緒というものを見習ってほしいものだ。
そしてそんなヨーロピアンな風景を楽しみながら走る二人の左手に見慣れたものが現れた。
「ツッチー、すし屋だ!!すし屋がある!!」
もともと『郷に入っては郷に従え』の精神をもつ土屋先生だが(彼は海外で日本食はまず食べない)、ヨーロッパで日本のすしがどのように販売されているのかにはとても大きな興味があるようだ。
わざわざ反対車線まで行ってすし屋を確認する二人。
表には日本語・英語・フランス語の三ヶ国語でスシの写真と説明が書いてある。
・・・が、
「・・・ツッチー、値段がどこにもないよ・・・」
「・・・つまり・・・値段を売りにしているわけではないということだね・・・」
多分とても高いのだろう。
ミネラルウォーターが一本2ユーロもするこの町である。スシの値段も推して知るべしといったところか。
「うーん、ニッポンノオスシ、トッテモガンバッテマスネ。」
おもわず変な発音で言う光君。
「・・・まぁ・・・もともと食べるつもりもなかったけどね。」
横でボソッとつぶやく土屋先生。
気を取り直して再び走り始める二人。
「ツッチー、そろそろ駅の付近だと思うんだけど?」
「ん?ああ、そうなの?」
白々しく言う土屋先生。
「ちょっとそこの地図で確認してくるね。」
『ちっ、余計なものがあるな、なんでこんなものがあるんだ。』
町の地図を苦々しい顔で見る土屋先生。
そんなにトラブルのねたが欲しいのか・・・
「もうすぐつくみたい。」
うれしそうに振り返る光君。
「ウン、トテモヨカッタネ。」
それにつまらなそうに答える土屋先生。
今日は本当にトラブルを起こさずにすごせるのか?
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