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SYU's TraveLog.


登録07.07.07
初日・地下鉄に乗ってパリへ 最悪の事態?


シャルル・ド・ゴールから地下鉄に乗ってパリへ。
と書いてしまうとまるで順調に地下鉄に乗れたように聞こえるが実は違う。お忘れだろうか?彼らが17キログラムの重りを背負って旅していることを。実はこの時点で彼らは地下鉄を一本遅らせてしまっていたのだ。
息を切らせて自転車を運ぶ光君と、何も言わずについていく土屋先生。この沈黙の意味を光君が考えるには、彼には余裕がなさ過ぎた。
彼が呼吸を整えたころには、すでに地下鉄は地上を走っていた。どうやらパリの地下鉄は、郊外に出ると地上を走るものらしい。この辺は日本と同じみたいだ。



光君は車内を見渡しながらふと口を開いた。

「なんか・・・あんまりきれいじゃないねぇ」

「どんなのを想像していたかはわからないけど、気持ちはわかる。俺がアメリカに行ったときもイメージと現実のギャップに驚いたもんだよ」

そう、パリと聞くと華やかなイメージがあるだろうが、実際のところ、交通機関は日本の方がずっときれいだ。特にシートが。パリの地下鉄は座席がぺたぺたで、『きたない』とまでは言わないが、『きれい』といえるほどきれいではない。



そしてたどり着いたパリ。
だが彼らにはパリの地上に顔を出すだけの余裕はなかった。タイムリミットぎりぎりでサン・マロ行きのTGVが出てしまうのだ。そして彼らの肩には17キログラムの重りがのしかかっている。パリの複雑な地下鉄の通路を、上る、下る、上る、下る・・・。しかし、どこから列車が出るのかはわからない。そして光君の体力が限界を超えようとしているときにそれは聞こえてきた。

『ピンポーン・・・・・・・・・・・・・・チェンジ・・・・ザザッ・・・トゥ・・・サン・マロ・・・』

構内放送だ。
しかし体力の限界に近づきつつある光君にはその放送を気に留めているだけの余裕はなかった。そして土屋先生の悪魔のような行動が実行される。

「光君、さっき空港では聞き逃してしまったのだろうが、シャルル・ド・ゴール駅の窓口のスタッフは サン・マロ行きの列車は2番線から出ると言っていた。」

その情報に嘘はない。
しかしなぜこのタイミングで助け舟を出すのだろう?
もちろん、どちらに行ってよいかわからなかった光君は藁をも掴む心境でその言葉を信じる。
数分後、光君が乗るべき2番ホームを発見し 間に合ったと思った瞬間、それは起こった。

「これ、サン・マロ行きじゃない!!」

そのとき反対側のホームから発車したTGV、それこそが乗らなければならない列車だったのだ。
そう、先ほどの構内放送は列車の発車ホーム変更の知らせだったのだ。
時計を常に気にしていた土屋先生が狙っていたのはまさにこの瞬間だった。限界まで情報は与えてやり、ぎりぎりのところまで引っ張ってやるが、最後の詰めはしてやらない。

光君は緊張の糸が切れ、その場に崩れる。

しかしここでつまずいているわけにはいかない。新しい引き金は、もう引かれてしまったのだ。立て、立たなければ前に進むことはできないのだ。光君!!



「・・・ツッチー・・・」

しばらくして光君が口を開いた。

「どうした?」

すでに解決しなければならない問題が山積みだ。そう言いたげな顔を光君に向け、次の言葉を待つ土屋先生。

「おなか減った。とりあえずなんか食べ物。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ?・・・ああ・・・そ、そうだな、とりあえずラウンジにでも行くか・・・」

早い!!早すぎるぞ光!!確かに立ち上がれとは言ったが、なんとまぁ切り替えの早い。
さすがに土屋先生も面食らっているではないか。


自動販売機でジュースを買う光君とその背中を見てる土屋先生。
先ほどまで悪意に満ちていた土屋先生の目は今、戸惑いの色を濃く宿している。

「・・・大物かも知れない」

ボソッとそうつぶやき、次の手を考え始める土屋先生。
すでに次の問題は用意されている。
サン・マロにたどり着けなくなった今、今後の行き先と今晩の宿泊先を考えなければならないはずだ。それも時刻は午後7時30分。ここから先に進むも、パリに留まるも、どちらにせよ宿を探さなければならないことに変わりはない。異国の地で何の準備も情報もない状態で放り出されたはずの光君は・・・なぜか冷静に見える。



「とりあえずレンヌまで行くチケットを手配してくるね。」

ほほう、切り替えが早いな。
何かを言いかける土屋先生を後に残し、さっさと窓口でTGVの予約をする光君。ユーロパスは、TGVなどに乗るときは予約をしなければならないのだ。全席指定席だから。もちろん指定料金数ユーロもかかる。しかし予約した便を逃しても、無料で予約を書き換えてくれるのだ。
ここまでで光君、切符の手配もずいぶん板についてきたようだ。順応性は結構高いのかもしれない。

光君は午後8時の便を予約し、土屋先生を引き連れて売店へ。



売店を見つけた光君が見たのは、パンとパンとパンとパンとサンドイッチ。
っていうかパンばっかりじゃねぇか?
確かに『フランスパン』という言葉があるくらいフランスのパンは有名だが、ちょっとばかりこれはねぇ・・・

パンはあまり好きではない光君は、店のウィンドウとしばらくにらめっこ。



そして結構手早く会計を済ませた光君と、まだぐずぐずしている土屋先生。
旦那、旦那、何を手間取ってるんですかい?
男ならとっとと決めちまってくだせぇ。

しばらく商品とにらめっこしていた土屋先生も意を決したようにパンと水を購入。
しかしレシートを見ながらまた固まる。


なになに、レシートの内訳ですかぃ?

どれどれ、1ユーロ150円として、
ジャンボサンド(でっかいフランスパンにハムが2・3枚はさまってるだけ)が500円
お水が1.5リットルで・・・450円ですかい・・・
いやぁそりゃあ固まるね旦那。

よくよく見てみると、水は500mlのものでも300円はする。
そういえばパリは物価が高いという話をどこかで聞いた覚えがある。
一日に水を8リットル近く消費することもある土屋先生にこれはきつい。そういえば土屋先生もパリに来るのは2度目だったか?普段ルーマニアとかの物価の安い国を回ってる分、この衝撃は大きかっただろう。

二人とも軽く腹ごしらえを終え、20:30のTGVを待つ。
・・・ちょっとちょっとお二人さん、本当に20:30ですか?
よーくチケットを見てご覧なさい。

光君  :ねぇツッチー?
土屋先生:どうした?
光君  :時刻表に20:30に出るレンヌ行きがないんだけど・・・次は21:00発みたいだよ?

土屋先生:どれどれ・・・お、ホントだ。光君、チケットは?

20:00発レンヌ行き

二人そろって:・・・・・・・・・

光君  :えーっと、もう一回行って来るね。
土屋先生:うん、頼んだ


どうやら二人ともかなり疲れてきた模様。
光君は今回もてきぱきと予約の変更をすすめる。



ここでひとつまめ知識。
パリの列車は自動改札なのだが、日本と違ってゲートがない。切符がなくても列車内に入れてしまうのだ。この時、自動改札機にチケットを通していないとキセル行為と見なされてしまう。そして自動改札機に通したチケットは変更が不可能となるのである。
つまり、改札に通しさえしなければ、当日中の変更はし放題である。

今度は間違いなく21:00発のTGVに乗り込む二人。
光君も用心深くなり、何度も行き先を確認する。
まだ初日であるにもかかわらず、随分と場慣れしてきたようだ。
まぁこれだけたくさんの事件があればいやでも場慣れしてしまうかもしれないが。



TGVに乗り込んだ光君は記念写真をパシャっ!!
ピースしてうれしそうににっこり笑って・・・笑ってないねぇ・・・
無理もないか、既に笑う余裕もなくなってしまうほどに疲れているのね。
でもまだまだ今日という日は終わらない。光君、宿はどうするんだい?

「ツッチー、レンヌについたら速攻で自転車組んでホテル探そうね。」

「ああ、 任せたよ。」

「・・・うん、こんだけいろいろやってきたんだ。ホテルくらい何とかなるよ!!」

元気に言い切る光君。
たった一日でずいぶん強くなったもんだ。残った試練はあとひとつ、そう考えれば最後の気力を振り絞ってラストスパートもかけられるだろう。

・・・本当に最後の一つになっていれば・・・

さまざまな苦難を乗り越え、レンヌにたどり着いた光君を待ち受けていたのは本日最大最悪のトラブルだった。


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