SYU's TraveLog.


登録07.07.31
2日目・モン・サン・ミシェル前にて
モン・サン・ミシェルへの道すがら、小さなトラブルが発生。

「ツッチー、こっちの自転車ギアがおかしいんだけどそっちのと変えてくれない?こっち、低速ギアがかみ合わなくてのりにくいんだけど」

ずばり本題を切り出す光君。言いたいことはわかるが、悪いとらえかたをするとかなり自分勝手に聞こえる。

「ん?・・・別にいいよ。」

体力的に余裕しゃくしゃくな土屋先生は、特に気を悪くした様子も無い模様。

しかし・・・このことがまた後のトラブルを引き起こしてしまうことを二人は知らない。




「見えた!!あれあれ!!モン・サン・ミシェルだ!!」

二人が走る道はいつからか別れ道の無い完全な一本道になっていた。道の左右は湖が広がる。そしてその先にそびえる修道院。実はこの修道院は、かの有名な映画監督、宮崎駿氏がてがけた『ルパン三世・カリオストロの城』のモデルになっているのだと言われている。光君は小さいころからこのアニメが大好きで、どうしてもその目で実物を見たかったのだ。

目的地が目前にあることに興奮した光君は、今までの疲れも、馬や牛への怒りも忘れ、一目散にモン・サン・ミシェルへと向かう。短い距離だったが、光君にとっては大冒険だ。無事目的地にたどりついたという喜びと達成感をかみしめる光君。



土屋先生も今までの道程を確認するように、自分たちの走って来た道を振り返る。

・・・が・・・

バスがある。
それも何台もある。


何かに気づいたらしく、土屋先生が近くのバスの乗員に話を聞いてみると・・・

「なんだぁ、おめぇらぁ?Dolからチャリだぁ?がははははぁ、御苦労なこった!!俺はこいつでレンヌからのここまで観光バスの運転をしてるが、あそこからここにくるのにチャリとは!!いやぁモノズキだなぁ兄ちゃんたち!!」

なんと、ここまでの苦労は水の泡か?詳細を聞いた光君の両肩には『骨折り損のくたびれ儲け』という言葉が重くのしかかる。
しかしただでは起きない光君。

以下は光君主観フィルターでお送りします。

「しょうがねぇな、おっちゃん、こっからは何時に出るんだ?」

「ああ?そんなこと聞いてどうするんだ?」

「乗っけてってくれよ、こっからレンヌまで。いくらだ?」

「わりいなあんちゃん、こっからは乗れねぇんだよ。ってかここから観光バスに初乗りってのは普通あり得ねぇからな。」

「マジかよ!!」

「ああ、まじまじ、大マジだ。頑張れな、兄ちゃん。応援してるぜ。でもちょろちょろ道路の真ん中走ってんなよ。邪魔だからな。」

確かにモン・サン・ミシェルへの道は片側一車線、バスにとって目の前をちょろちょろされるのは邪魔なことこの上ない。

見えかけた希望がおっちゃんの言葉で見事に散華して行く光君の横で、土屋先生が物言いたげな顔で立っている。

準備はできたのか?準備はできたのか?準備はできたのか?準備は?準備は?準・・・

無言でプレッシャーをかけまくる土屋先生。本来であればこの程度の情報は事前に収集できてしかるべきであったのだ。バスに乗ることを土屋先生が望んだか否かは別にして。

しかしそれに対し・・・一向に気付かない鈴木光。若干15歳。

「しょうがないか、Pontorsonまで戻るにしても道はどうせ平坦だったし、そんなにつらくないだろ。サンキューな、オッチャン。」

「ボン・ボヤージュ!!(よい旅を)」

ポジティブシンキングな光君と能天気そうなバスの乗務員。光君の精神力も順調に強化されている。

自転車を駐車場においてモン・サン・ミシェルに向かう二人。




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