SYU's TraveLog.


登録07.07.10
2日目・Dol⇒Pontorson 待ち時間は1時間
本日は何事もなく順調に物事が進んでいる。
空は青く、すみきった空気が二人の行く先を祝福しているようだ。

さて、モン・サン・ミシェルまでは一度電車を乗り換える。

レンヌ→Dol→Pontorsonの順に乗り継ぐのである。

Pontorson→モン・サン・ミシェルは列車がないので、これは 現地に着いてから移動手段を探すことになった。二人がこんなアバウトな計画をたてるのは「 最悪、自転車で移動すればいいか」という意図が働いているのは間違いない。その意図が間違ってないかどうかは別として・・・

「まずは午前10時までにはモンサンミシェルに到着、そしてそこから折り返してパリへ。夕方の7時までにパリに戻れれば、そのまま夜行列車でベネチアに抜けれる。」

光君は大胆にも明日の朝にはベネチアに着くつもりのようだ。実はこの時、Pontorsonからパリに戻る列車の時刻表を確認していない。光君が手にしているトーマスクックは簡易版で、あまりローカル線の時刻表は詳しく載っているわけではなかった。 路線が存在することは路線図から明らかだったため、 行けばなんとかなるとうのが光君のプラン(?)。

そこに道があれば後は進むだけ

ここ二日で非常に強い精神を形成しつつある光君は、まさに 漢(おとこ)らしい選択をするようになった。

「そういえば光君は自転車でどのくらい走れる?」
「うーん・・・100キロくらいなら普通に走れるんじゃないかな。」
「そうか、じゃあちょっと頑張れば都市間の移動ができるな。」
「最悪の場合はそうなるね。200キロとかじゃなければなんとかなると思うけど。」

ほうほう、さすが若いね光君。男の子はやっぱりそうでなくちゃね。
しかしまた・・・わらってます、わらってますよ土屋先生が。光君は気づいてないけどまた何か考えてるみたいですよ光君。




そしてDolに着いた二人は、

「ツッチー、一時間も電車こないんだけど」

弾丸移動を計画していた光君には予想外のタイムロス。この辺は日本の東京とかと違ってローカル線はあくまでローカル線。電車の本数少なきことはなはだしい。

ここでなんと トラップ発動

「光君、一時間も待つんだったら自転車で走っちゃった方が早いよ。だって 直線距離 たった10キロしかないんだよ。」

「いや、でもさ、ここは待とうよ。自転車で行ってもどうせ追いつかれちゃうし。」

「いやいや、一時間あれば10キロは走れるだろ?ここに電車が来るころにはPontersonについてると思うんだよ。」

「でも短縮できても20分とか30分でしょ?それならここで待った方が・・・」

いやそうな顔の光君。まぁ当然だろう。普通なら無駄に体力を消耗しない方がいいに決まっている。

「どうせ同じなら、自転車で走った方が得だ。景色も見れるし、せっかく自転車を持ってきたんだから。」


いやがる光君を明らかにおかしな気迫で押しまくる土屋先生。本質的に「人と違うこと」が大好きで「おもしろそう」で「何かあるかもしれない」ことが大好きな土屋先生は・・・ほとんど光君を引きずるようにして駅の外へ。この時まだ光君は この先に起こるであろうトラブルを予測するには経験値が少なすぎた。




駅を出てると、映画にでも出てきそうな町のワンシーン。
いかにもヨーロッパという感じの町並みが広がる。
駐車車両が多いのは微妙なところだが・・・





駅を出てしばらく走ると看板が。

モン・サン・ミシェルは左折

地図と言えば路線図しか持たない二人は道も知らない。もともと光君はこんなところを自転車で走ることなんて予想すらしていなかった。てきぱきと指示を出す土屋先生に押される形でどんどん先へと進んで行く。



駅から道なりに走っていると二人の目の前に妙な看板が、

Dol

と大きく書かれている・・・が、何で赤い線?裏には赤い線がないだけで同じ字が書かれている。

「ツッチー、これって何?」
「ああ、Dolって街がここで終わっているって事だよ。」
「街が終わるの?!」

そう、ヨーロッパは街の終端というものが存在する。
日本の、特に東京などの人口過密地帯に住んでいる人間には想像しにくいかもしれないが便宜上、街がここで終わるのである。ここから先はしばらくの間、ほとんど民家がない。



そしてしばらく走ると、幹線道路に出る。念には念を入れて自転車のタイヤに空気を足す光君。そして走りだそうとしたその時。車のマークの看板が目に入る

「ツッチー・・・これって高速道路じゃない?」
料金所がないから平気。日本だって高速道路は料金所があるもんだろう?」
「いやツッチー、ここ日本じゃないし、それにこれ自動車専用の看板だろ?」
「・・・」

ここはあまり食い下がらずに引き下がる土屋先生。まわりの危険を察知する能力にも磨きがかかる光君。




高速道路をあきらめた二人(あきらめたのは一人か?)は一般道をとろとろ走る。すると突然土屋先生がペットボトルを車道に転がしてしまった。自転車への固定が甘かったのだろうか?

「ちっ・・・」

舌打ちしながらペットボトルを拾いに行こうとする土屋先生の左から猛スピードの車が3台。

パコペコッ♪・・・ポコピコっ♪・・・ポコポコンッ♪

見事にペットボトルを踏んで行く3台の車。引きつった顔の土屋先生。しかしさすがは現代科学技術の結晶ペットボトル、車に踏まれても壊れない。大笑いする光君、微妙な顔の土屋先生。



そして
走る、走る、ひたすら走る。
畑、畑、ひたすら畑。
右も左も前も後ろもみんな畑だ。
フランスはもともと農業国だったというのがうなずける光景。
ごくたまにポツポツと町がある。




しばらく走っていると町中で後ろから重低音が・・・ブルトーザー?

いかにもヨーロッパ風な町中に場違いな重機。ちょうど赤信号で二人の後ろに着くブルトーザー(?)をカメラに収めようとする土屋先生。ところがブルトーザーの中で何にがしかわめきつつ土屋先生を指さす男・・・

「ツッチー、なんか言ってるよ?」

ガラス一枚にさえぎられ良く聞こえないが、その男の言葉は少なくとも英語ではないようだ。

それに気にせずカメラを向ける土屋先生。シャッターを押す瞬間、男は満面の笑みを浮かべ、ポーズをとった。カメラを見た男は自分の写真を撮れと言っていたようだ。ヨーロッパの一部を除くほとんどの地域では写真を撮られることに抵抗を感じる人は非常に少ない。むしろ 「俺を見てくれぇ」的な人間の方が多いようだ。このあたりは日本とはかけ離れて違うところである。




それから30分後、そこには疲れ果てた光君の姿が。

「ツッチー・・・厳しい。ちょっとゆっくり行こうよ・・・」

そう言って自転車を降りてしまう光君。しばらく前からゆるやかな上り坂が続いているのだ。

『山とかなきゃ平気、100キロくらい走れるよ』って豪語してたじゃないか?」

「いや、だけどさ、こんなに坂があるなんて・・・」

上り坂、確かに上り坂だが非常にゆるい。町中を歩いていたら坂だと気付かないかもしれないほどに。しかし、自転車は少しの坂でも大きな負担になる。平坦な道であればコロコロと慣性力で進めるが、少しでも坂があるとすぐに前に進む力を失ってしまう。つまりちょっとでも傾斜があればえんえんとこぎ続けなければならないというわけだ。



そして息をととのえた後、自転車で走り始めた光君がふと顔を上げる。

「ツッチー?」

「どうした?」

「もう半分ぐらい?」

「そうだな、そろそろ半分くらいかな、Pontorsonまで。」

「うお・・・まだまだじゃん・・・俺、親父がいっつも言ってる プラン・ドゥ・チェックの意味が分かったよ。」

「ん?」

けげんな顔をする土屋先生。彼は今の状態で光君にそれがしっかりできているとは思っていない。そんな土屋先生の横で、大きく息を吸い込んだ光君は、


「プランされる!!ドゥさせられる!!もう後戻りできないことをチェックした!!」


どうだとばかりに土屋先生を見る光君、横で爆笑する土屋先生。

「・・・次からちゃんと自分でプランします・・・」

そういう光君の横でさらに大爆笑する土屋先生。

光君、少しは余裕が出てきたみたいじゃないか。頑張れ、あと半分。・・・ Pontorsonまであと半分・・・








そうしてさらに先へと進む光君。のどかな田園風景を見ながら心穏やかに・・・はならないみたい・・・顔を真っ赤にしながらゆるやかな坂をのぼるのぼるのぼる。いえもちろん下りもありますよ。目立たないだけで。

まわりは本当にのどかで、どこまで行ってものどかな風景。

さすがに飽きて休憩にする光君、自転車から降りてストレッチ。




本当に何もないところをただひたすら走る二人、そしてその二人に容赦ない向かい風が。ただでさえ足がつらい光君には非常にこたえる。

「ツッチー・・・」

「何かあったかい?」

「・・・くせぇ・・・」

そう、風が向かい風になったことで前方からなんともいえない肥料の香り(?)が。

「フランスってさぁ、物価は高いし、道は臭いし、道は坂ばっかりだし・・・」

「ああ、いやまぁそういうわけでもないのだが・・・」

光君のフランスに対するイメージが歪んでいく。もちろん事実なのだが、 フランスって田舎臭くて肥料のにおいでめちゃくちゃくさいという第一印象(今までは印象をもてるほどまともに周りを見る余裕はなかった)を持ってしまった光君、これは少し問題かもしれない・・・




足の筋肉は悲鳴を上げ、心拍数は上がりっぱなし。そんな光君の目にうつったのは・・・

「てめぇが肥料の原因かぁ!!」

馬をみて叫ぶ光君。確かに馬の糞が肥料として使用されることはあるしそれが臭いのもわかるけど、『肥料の原因』になるのはむしろ良い事ではなかろうか?ここは「てめぇが臭いの原因かぁ!!」と言うべきであろう。もちろん馬一頭でそんなに臭くなるわけではない。勘違いはなはだしい。

その横で土屋先生は微妙な顔。『馬をじかに見るのは初めてだろう?』とか『こんなところで馬を飼ってるなんてねぇ』とか言おうとしているときに光君の苛立ちが頂点に達したらしく、言葉のやり場を失ってしまったようだ。




「ほら光君、向こうになんかありそうじゃない?」

街道沿いの古びた村を指して言う土屋先生。確かに心惹かれる(?)路地がある。舗装をされてない路地というのは日本でもあまり見かけなくなってきているのではないだろうか。

「・・・」

それには気づかずにもくもくと自転車をこぎ続ける光君。そんな余裕はないと無言の意思表示なのか、それとも本当に余裕がないのか、名残惜しそうに村を見る土屋先生を引き連れ光君は先へと進む。



そしてやっとのことで、

Pontorsonまで2km

あと少しで中継地点に到着だ。

「やった、あとちょっとで街がある!!」

「街に着いたら少し休もうか。光君も疲れただろうし。」

目的地が見えてきたせいか、少し元気を取り戻す光君。しかし・・・

モン・サン・ミシェルまで11km

・・・まだまだ先は長いぞ光君。




「海岸が近くなってきたせいか、道が平らになってきたね。」

道が平坦になり、自転車がその本領を発揮し始めて上機嫌の光君。

しかし、 勘違いである。確かに道は平らになったが、海岸には全く近づいていない。

「この調子なら、モン・サン・ミシェルまで自転車で行けちゃいそうだね!!」

上機嫌で土屋先生の方を見る光君。喜んで賛同する土屋先生。

・・・もともと土屋先生は最後まで自転車で行く気満々だったようですが・・・



道しるべからPontorsonという文字が消えた。とうとうたどり着いたのである、Pontorsonに。

・・・直線距離にしてほんの10Kmであるが・・・

時刻はもう正午近くになってしまっていたが、二人はとりあえず一休みすることにしたのであった。



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