SYU's TraveLog.


登録09.03.25
4日目・ニースからミラノ


美しい海を右に見ながら、電車は一路ミラノへと向かう。

二人は海を見ながらのんびりと客席でくつろぐのだった。


土屋先生:光君、そういえば 今日の予定はどうするつもりなのかね?

光君:んー・・・ベネチア泊とか?

土屋先生:そうなんだ。宿は?

光君:ユースホステルに泊まるつもりだよ。ほら、ツッチーが場所知ってるって言ってたし。

土屋先生:へー、そうなんだぁ♪

光君:・・・?


確かに土屋先生は 場所は知っていると光君に伝えはしたが、 教えてあげるとは一言も口にしていない。



光君:ツッチー、この列車、モナコ通るんだよ。

土屋先生:ほう、てことはF1のコースが見れる?

光君:そうそう!ちょっと楽しみだよね


・・・とそんな会話をする二人を乗せた列車はトンネルの中へ。

少しずつ速度を落としていく列車が到着したのは・・・

モナコ・モンテカルロ駅

なんとモナコの駅は トンネルの中にあった。


土屋先生:・・・

光君:・・・


しばしまずい雰囲気が流れる。




光君:そういやツッチー、おなか減んない?

土屋先生:よければチーズがまだ残ってるけどどう?

光君:・・・いや・・・あんまし・・・

土屋先生:いいから食ってみろって!!


思いのほか強い口調の土屋先生に、しぶしぶチーズを口にする光君。


土屋先生:どうだ?

光君:・・・・・・・・・

土屋先生:・・・そうか。わかった。何も言わなくていいぞ。

光君:何か車内販売が来たら買おう。


ちなみに土屋先生はまだチーズとパンが残っている。

車内で売っているものは 基本的に高いことが多いのだけど、光君、そのあたりはわかっているのだろうか?




しばらくして車内販売のワゴンが通る。

『おう、何か食べ物ある?』

『はい、いろいろ用意してございますがどんなものを?』

『昼飯になるようなものないかな? できればパンでないもの。』

『はい、それではサンドイッチなどいかがでしょう?』

『いや、だから パンでないものをね・・・』

『ハムと野菜をはさんだものがございますが・・・』


よくよく考えれば当りまえの話で、ハンバーガーやホットドックは売ってないだろうし(冷めるから)、おにぎりなんてのはさらにありえないだろう。


仕方なくハムサンドをたのむ光君。

食べる前にしっかり野菜を取り除く。

もちろん土屋先生がそれを凝視しているのだが、特にそれに気づく風も無く、ハムサンド・光シェフのオリジナルレシピが完成する。

ちなみにお値段4.5ユーロ。

目くじらを立てるほどは高くないが、決して安い額ではない。



しばらくすると、列車は海沿いの道から内陸部へと進む。

視界から海が無くなり、町の雰囲気も少しずつ変わってくる。

もうしばらくでミラノに到着だ。

ミラノでは乗り換え時間の間にいくばくかの観光ができることだろう。



そうこうしているうちに2度目の車内販売がやってくる。

『おっちゃん、なんか安いものある?安くて量のあるやつ』

聞き方がダイレクトな光君。

『そうですね・・・少々お待ちください。』

そういって他の客の注文したコーヒーを注ぎつつ、光君のリクエストに答えるべくしばし時をおく車内販売のお兄さん。



『クッキーなどいかがでしょう?』

そう言って取り出したのは、細い缶ジュースを少し大きくしたような円筒形の袋に入ったクッキー。

『1.5ユーロです。ご満足いただけると思いますが・・・』

『おっけ、んじゃそれ。』

お気軽に決める光君と、それを見ながら頭の中で残金を計算する土屋先生。



『かしこまりました。しばらくお待ちください。』

そうって優雅な身のこなしで領収書を書くお兄さん。

手書きの領収書なあたり、ヨーロッパの風情を感じる。

さらさらとペンを紙の上で走らせて、一連の動作で領収書を・・・


ベリッ♪


ちぎったのはいいのだが、まるで辻斬りにでもあったかのような形で左上の部分が千切れる領収書。

面積にしておよそ4分の1程度がなくなっている。

思わず顔を見合わせる二人。

しかし本人はいたって冷静に

『お待たせいたしました。ほかに何かございますか?』

と言ってニッコリ笑う。

無言でぶんぶん首を振る二人。


光君:ツッチー・・・フランス人て・・・ずいぶんおおらかと言うか・・・・その・・・

土屋先生:大丈夫だ光君。僕もこんなに愉快なやつはめったに会わない。



そんなとき、車内に不吉なアナウンスが。

『ピンポーン♪この列車はミラノ駅に25分ほど遅れて到着いたします。乗り継ぎなどされる方はお急ぎください。』


光君: うおぃ!!


敏感にアナウンスを聞き取って叫び声を上げる光君。

もともと乗り継ぎ時間は30分しかない。

そこを25分も遅れたら、乗り継ぎはぎりぎりになってしまう。

さらに、国をまたいで走る列車の場合は、列車の遅延を考慮したダイヤの調整も行われないのだ。

基本的にヨーロッパの列車は、電車に乗りさえしなければ無料で予約の変更を受けてもらえるのだが、国をまたいだ場合、さらに当日に乗り継ぎができない場合などは予約料が帰ってくることがなかったりする。


光君:ツッチー・・・どうすんべ?

土屋先生:・・・まぁ・・・とりあえず自転車も畳んでないことだし、着いたら自転車で次の列車まで全力疾走だな。階段がないといいけど♪


かなり無茶な助言をする土屋先生は・・・どことなく楽しげだ。

対する光君はかなり青ざめた様子。

もちろんミラノの宿泊施設などは調べてきていない。

心拍数がハードロックになりそうな光君を乗せて、列車は優雅にミラノへと向かう。



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