SYU's TraveLog.
登録07.10.19
2日目・ポンターソンからレンヌ・パリ・・・そして
ポンターソンからレンヌまでの道中を寝て過ごしてしまった光君。
彼にとってはほんの一瞬のできごとだった。
「ついたぞ、光君。」
「・・・んー?・・・どこぉ?」
「レンヌだ。ここからパリに戻らなきゃならないだろう?」
「あー、そうだね・・・」
光君は眠い目をこすりながらのそのそとバスを降りる。
すると、バスに同乗していた子供たちがわらわらと土屋先生の周りに集まった。
「・・・なに?」
わけがわからず呆然とする光君の目の前で土屋先生が子供たちと楽しそうに話をしている。
「・・・エクストラオーディナーラー・・・・マジシャン・・・テ・・・」
子供たちはかなり興奮していたようだ。しばらくして話が一段落したのか、土屋先生が子供たちと写真を撮る。
大きく手を振りながら土屋先生に別れを次げる子供たち。
横で見ている光君はわけがわからない。
「ツッチー・・・あれ、何?」
「ん?君が寝ている間暇だったから、彼らに手品を見せていたんだ。ずいぶんと楽しんでもらえたみたい。」
「うぉぉ・・・サービス精神旺盛だねぇ・・・」
いくらかうんざりした声の光君
「いやさぁ・・・光君寝ちゃうし。暇だったもんだから。」
そうかそうか、そうやっていろんなとこで女の子を口説くんですね?土屋先生は。
眠い目をこすりながら駅の窓口に向かう光君。
もう意識もほとんどない夢遊病状態で、パリまでのTGVの予約をする。
寝ぼけていてもチケットの手配が出来るところまで進化した光君。すでに英語に対する不安とかそういう類のものは微塵も残っていない。
・・・まぁそれ以上の不安のタネが後ろからついてくるんだから当たり前か?
バックパッカーとして当たり前のことを当たり前にこなし、自動改札に切符を通す光君。
出発は18:35。パリ到着は20:40。これではパリからベニス(ベネチア)までのユーロナイト(夜行列車)には乗れそうにない。
・・・が・・・光君は眠すぎてそれどころではない模様。
「どうだ光君、これでいいかね?僕のせいだった部分はこれでチャラになったかい?」
「・・・ まだだろ?だって今日中にベニス行きの夜行のれないし。」
「・・・」
『完璧にお前の思うとおりに行動できたとしても絶対無理だったってば!!』という心の叫びを押し殺し、にこっと笑う土屋先生。
「ふむ、そういえば光君はパリの宿は調べてあるのかい?」
「ぜんぜん!!まったく調べてないよ!!もともと泊まる予定なんかなかったからね!!」
ひっくり返りそうなくらい胸を張って答える光君。
頭を抱える土屋先生。本当ならここで光君の準備不足をたしなめるところなのだが・・・
「そうか、わかった。じゃあそれも僕が何とかしよう。」
「そうして。」
「・・・」
引きつった笑いを浮かべながら電車に乗り込む土屋先生とそれに続く光君。
TGVの中に入って一息つく二人。
土屋先生:そういえば・・・
光君 :何?
土屋先生:光君はパリの街はまだ見てないよね?
光君 :確かに。
土屋先生:じゃあ明日はパリを観光してから夜行でベニスに行こうか。
光君 :あー、それいいアイディアかも。
そう、このままベニスに抜けてしまっていたら光君はパリの町並みを見逃してしまうところだったのだ。ある意味運がいい。
「光君、明日はどこをまわろうか?エッフェル塔と凱旋門は行くとして・・・」
「・・・」
「・・・光君?」
「・・・んごぉぉぉ・・・んごぉぉぉ・・・」
土屋先生の隣で爆睡する光君。
よっぽど疲れていたのか、首が変な方向に曲がっているのも気にせず寝ている。
「・・・無理もないか・・・」
つぶやきながら周囲を見る土屋先生。彼は暇で暇でしようがないのだ。しかしここはTGVの一等席(鉄道パスが一等席用のものだったから)、土屋先生が手品をするような子供も、話しかけやすいおねぇちゃんもいない。
「・・・めっちゃ暇・・・暇で死にそう・・・」
そして約2時間、土屋先生は暇と戦うことになった。
土屋先生はパリのユースホステルなどの情報は一通り調べてあったため、本当にすることもなくTGVの座席におさまっていた。あたりは暗くなり景色もよく見えない。暇をもてあます土屋先生が暇でなくなったのはパリについてからだった。
「・・・疲れた・・・」
TGVを降りて一番最初に口から出たのがこの言葉。
「ツッチー、寝なかったの?」
「ん?暇で暇でどうしようもなく暇で、ものすげー疲れた。」
「そっちかよ!!」
TGVの中でそれなりに休息が取れたのか、光君はずいぶんと元気になっていた。
「まぁとにかく死にそうな暇は去ったのでユースホステルでも行くかぁ・・・」
そんなこんなで二人は地下鉄へ。
「ツッチー、どっち行くの?」
地下鉄に入って、光る君はいくらか上機嫌だ。自分で決断して自分で進むよりも、道を聞きながらついていくほうが楽だと気づいたらしい。もちろん明日からは光君が 全部自分でやらなければならないのだが、とりあえず今はお気楽でもよいかもね。
「んー、 Leo Lagrangeってユースホステル」
そんなやり取りを二人がしていると、一人のフランス人男性が近づいてきた。
「どうしたんデスカ?あなたたち、困ってイマスカ?」
それなりに流暢に日本語を話す。あっけにとられている二人。そしてそれを意に介さずに話を進めるナイスガイ。
「ワタシ、フランソワといいマス。あなたたち、困っているならお助けしマショウカ?」
とりあえず引きまくる土屋先生と、 渡りに船とばかりに助けを求める光君。
「ユースホステル探してるんですけど、どっかいいとこありませんか?」
「オーウ、ちょっとマッテテくだサイ。」
おもむろに携帯電話を取り出しどこかに電話をするフランソワさん。
「あなたタチ、れお・らぐらんじゅトいうユースホステルがありマス。そこはまだヘヤガアリマス。デンシャはこのエキの・・・」
と言ってユースホステルまでの行き方を細かく教えてくれるフランソワさん。
「さんきゅー、フランソワさん。」
「はっはっは、困ったときはオタガイサマです。ワタシ日本ダイスキデスカラ」
そういってフランソワさんは嵐のように去っていった。
「親切な人もいるね、ツッチー。」
「うっわー、なんかこう・・・とてもレアなものに出会った気分だ。」
予想外の助け舟に驚く土屋先生。彼の経験上、現地人が日本語を使って彼を助けてくれたことはない。初めて目にした(海外での)国際派を前にして土屋先生は完全に固まってしまっていた。もちろん行き先など頭に入ってはいない。
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