SYU's TraveLog.
登録07.07.06
前日の夜
突然のヨーロッパ遠征
決まったのはほんの二日前、まともな準備もできないままヨーロッパに行くことになった鈴木光(スズキサカエ 15才)は新しい世界への旅立ちに夢をふくらませていた。
しかし、これはただの旅行ではなく彼に与えられた試練だったのだ。
引率の土屋先生は 『何もしない』ことを彼の父親と約束し、今回の旅行は『光君が土屋先生を連れてヨーロッパに行く』のが条件となっていた。
予算は一人当たり18万円
このときすでに
- 自転車(20インチ折りたたみ)代(各種パーツを含む) 2万円
- ヨーロッパ鉄道パス代 3万5000円
- 航空運賃 6万5000円
を使っていたため、残りは一人当たり6万円。
行程は以下のとおり
- フランスではモン・サン・ミシェル修道院に行く
- イタリアはベネチアを観光
- オーストリアのウィーン西駅でピザを食べる
行程というよりもチェックポイントという感じのほうが強い。
最低限上記の場所は通過することになる。
さらに追加条件として
- 旅程は7泊9日
- ホテルなどは予約禁止
- ガイドブック所有禁止
- 現地ではパリからプラハまで自力で移動
ヨーロッパに到着するのはパリのシャルル・ド・ゴール空港、出発はチェコのプラハからであったため、ヨーロッパに着いたらいやでも強制的に移動しなければならなかった。
目的地まで到達しなければ日本に帰ることはできないのである。
光君はその苦難に耐えることができるだろうか?
以下は出発前のやり取りである。
午前2時頃
土屋先生:ちゃんと準備するんだぞ。
光君 :大丈夫、もう準備完了だよ。
土屋先生:ホテルやユースホステルのありかとか調べたか?
光君 :調べた。もう寝ていい?
土屋先生:本当に大丈夫だな?
光君 :大丈夫だって、もう寝るね。
土屋先生:・・・
土屋先生は単身ナップサックひとつでヨーロッパを駆け巡る猛者である。
自転車で国境を越えることもあった。
彼はどのような劣悪な環境でも絶えうることができる、いわばその道のプロである。
おそらく、 『死ぬほどの』危険を目の当たりにしなければ、光君を助けることはしないだろう。
その土屋先生は、横で静かに寝息をたて始めた光君を横目に、薄い笑いを浮かべていた。
多くの不安材料を抱え、光君は今、旅立つ。
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