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SYU's TraveLog.
登録09.07.17
1日目 出発・最初からいっぱいいっぱい
とうとうやってきた。
タツノリとナカオカの初海外修行デビューである。
二人とも海外自体が初めてだが、十分に根性の座った二人はきっとこの旅を切り抜けてくれるだろう。
二人のカバンが小さなウエストポーチなのは彼らの 覚悟の証なのかも知れない。
これから迫りくる多くの危機を切り抜ける必要最低限にして十分な装備が詰まっているのだろう。
・・・と思っていた矢先に・・・
それは王子駅でのこと。
タツノリ:成田空港って東京で乗り換えるんだよね・・・あれ、料金が載ってない。
地下鉄の料金表を見ながら騒ぐタツノリ。
いきなり大間違いである。
成田空港までの料金がみつからないとナカオカに声をかける。
土屋先生:タツノリ・・・事前準備はちゃんとした?
タツノリ:ええっと・・・成田空港って新宿で乗り換えでしたっけ?それとも渋谷?
それは成田エクスプレスである。
お値段も激高。
結局携帯で調べなおして日暮里から乗り換えて行くことに気付く。
先行きに不安を残しながらも、なんとか日暮里で乗り換えるタツノリ・・・であったが・・・
一番安い京葉線特急(1000円で特急券不要)に乗り換えるのかと思いきや、JRの成田方面行きに乗り換えようとする。
海外旅行に行ったことがないとタツノリは言っていたがこれほどだとは思わなかった土屋先生、額に汗をかいている。
ちなみにナカオカはしっかりと成田までの経路を把握していた。
さらに、土屋先生はタツノリに追い討ちをかける。
土屋先生:そう言えば、TSR(Eチケット)の表示の仕方教えたよね?もちろん持ってきてるよね?
タツノリ:・・・先生が持ってきたのでは?
土屋先生:なんで?仮に持ってきていたとしても誰が貸すものかよ。
タツノリ:・・・
一応Eチケットと言うのは空港に持っていかなくてもパスポートを通すだけで搭乗可能である便利なチケット。
一般にはこれを印刷して Eチケットの控えと言うのだが、もって歩かなくても問題の起きない場合がほとんどである。
土屋先生も紙媒体で持つことはまずなく、携帯に転送して使用している。
しかしそんなことは知らないタツノリは一生懸命携帯で調べ始めた。
しばらく携帯で検索し、E-Ticketの情報をメモ帳に書き留めたタツノリは、前日疲れて眠れなかったのかナカオカと二人でいねむりをはじめる。
土屋先生はタツノリが完全な準備不足なのか、それともただのおっちょこちょいなのかを考えながら、自分の印刷してきたE-ticketを見る。
そしてこのとき、土屋先生も気付かない恐ろしいトラブルがTSRに 印刷されていたのだった。
彼らがそれに気付くのはこれから約12時間後のことである。
日暮里から1時間30分ほどの時間を経て、成田空港に到着しセキュリティを抜けた彼らであったが・・・
タツノリ:・・・
突然立ち止まるタツノリ。
『どっちに行ったらいいんだろう?』
海外旅行が初めてなタツノリは成田空港のいくつもある通路の前でしばし迷う。
これらはもちろん全て空港構内につながっており、北ウイングか南ウイングかの違いはあっても問題なく出発ロビーにたどり着けるようになっている。
とりあえずまだ日本語が通じるのでインフォメーションカウンター(改札を出てすぐのところ)に行ってどちらに向かったらいいのかを聞くタツノリ。
タツノリ:あの・・・出発なんですけど、どっちに行ったらよいのでしょう?
案内嬢:お客様どちらの便ですか?
タツノリ:NW79便で台北までです。
先ほど電車の中で調べてメモした内容を伝えるタツノリ。
案内嬢:それでしたら北ウイングですね。右のほうのエスカレーターからお上がり下さい。
タツノリ:ありがとうございました。
初めて空港に来たということなのでこのあたりは仕方のないことかもしれないが、改札を出てからエスカレーターに至るまで15分。
『出発の2時間前までに空港に着いて下さい』とは初心者が迷っても十分に時間があるようにとの配慮からだろう。
土屋先生などはたまに1時間前についてあわててチェックインすることもある。
途中セブン銀行で(成田空港第一ターミナルにもちゃんとセブン銀行はある。到着ロビーから出発ロビーにエスカレーターで移動する際に発見できる)今回の旅行の予算をおろし、出発ロビーへ。
そして4Fについたタツノリは案内板を見て・・・わずか30メートル前方にあるノースウエストのカウンターを無視して逆方向、南ウイングに向けて歩き出す。
手に持つレンガが異様に重くタツノリの腕にのしかかる。
途中ナカオカがカートを発見し、タツノリにレンガをのせて行くように促すが・・・
タツノリ:レンガ一個でカート使うなんてかっこ悪い、持って歩く。
と言って断固拒否するタツノリ。
しかし・・・このときタツノリは何をしていいか分からずとにかく空港内をぐるぐる回る。
すでに彼らは北ウイングから南ウイングへと移動をしていたのである。
そして幸運(?)にも南ウイングで両替所を発見するタツノリ。
ここぞとばかりに両替するタツノリとナカオカだが、それを後ろから獣のような一対の目が見つめている。
土屋先生はタツノリが海外旅行保険へ加入するお金を全てドルに変えてしまうのではないかと思っていた。
もちろんそれを止めたりなどは決してしないのだが・・・
タツノリ:ナカオカ、お前まだ保険入ってないよな?
ナカオカ:えー?入ってないよ。
タツノリの微妙な言い回しのせいでナカオカのみ、ここで全日本円をドルに両替してしまう。
今回の旅のリーダーはタツノリなので、これ(ナカオカが海外旅行保険代を忘れること)はタツノリの大きなミスになるかと思いきや・・・実はそうではなかったのだ。
両替を終えたタツノリは、ノースウエストのある北ウイングとは正反対の南ウイングをしばらくうろつき、再びインフォメーションカウンターを見つけた。
タツノリ:えーっと、台北に行きたいんですけど。
受付嬢:・・・どちらのフライトでしょうか?
タツノリ:ちょっと待っててください、えーっと・・・あ、NW79便です。
受付嬢:しばらくお待ち下さい。
『ノースウエストのカウンターはどこですか?』と 一言聞けばよいところを、結構無駄に時間を食うタツノリ。
チェックインも済んでいないのに、空港に到着してからすでに一時間が経過している。
受付嬢:はい、チェックインは南ウイングからですので、ここを真っ直ぐ行っていただきますと、左側にカウンターが見えると思います。Cカウンターでの受付ですね。
タツノリ:ありがとうございました。
なんとか無事(?)チェックインは出来そうだ。
さすがに まっすぐ行くだけの道を間違えることなく、ノースウエストの味気ないチェックインカウンターに到着するタツノリ。
しかし何度やってもエラーが出てしまう。
タツノリ:センセー・・・
土屋先生:こんなときはTSRを見せて処理してもらうと楽だよ・・・TSRを持っているならね
タツノリ:・・・お願いしまふ
めったに印刷などしてこないTSRを取り出し、タツノリの代わりにカウンターのスタッフに声をかける土屋先生。
が、どうやらスタッフもうまく処理が出来ないようだ。
とりあえずレンガと肥料をキュートな紙袋に入れて、荷物として預けるタツノリ。
中身が出てしまうといけないということで、スタッフがガムテープを貸してくれる。
そしてその紙袋を受け取ったスタッフの顔が曇る。
スタッフの男性:・・・これ・・・あ、いえ、お預け入れの荷物はお一つですね?
紙袋の重さにいささか驚いた様子の男性スタッフ。
さらにめちゃくちゃ軽装なタツノリ&ナカオカの装備にも強い違和感を覚えたようだが、あえて黙っているスタッフ。
エラーの原因が分からずに、しばらく何かを考える男性スタッフであったが、目的地がプノンペンであることを知ると、
男性スタッフ:カンボジアのビザなどはお持ちですか?
土屋先生:現地で取得できますよ、先月一度行っていますし、そのときは平気でしたが?
男性スタッフ:ああ、ずいぶんといろいろなところに行かれてるんですね。
土屋先生のパスポートを見ながらうなずく男性スタッフ。
そして彼は土屋先生のカバンについているゴールドエリートとプラチナエリートの荷物タグに気がついた。
本来は上位のプラチナだけで十分なはずなのだが、土屋先生はプラチナのタグの色(ブラック)がノースウエストの職員の目に留まりにくいのがお気に召さないらしく、ゴールドとプラチナのタグを両方つけているのだ。
こうすることで、エリート会員としてのサービスが受けやすくなるのだが、今回はそれが見事に裏目に出た。
男性スタッフ:ああ、エリート会員の方ですね。それもゴールドとプラチナ両方の。なるほど、旅慣れていらっしゃるわけだ。ただいま発券いたしますので少々お待ち下さい。
スタッフの対応がガラリと変わる。
ノーチェックで機械のエラーを無視し、手動でサクッと発券手続きを済ませる。
今回この男性スタッフは、今のエラーを後で処理しようと考えたようだ。カスタマーファーストの名に恥じないすばらしい対応である。
しかしこれが12時間後の惨劇を引き起こす原因となるとはこの時点では誰も予測できなかったのである。
さて、12時間後の惨劇はさておき、旅の準備の最終段階、海外旅行保険への加入である。
タツノリ:んじゃぁ入りマース。
土屋先生:よしよし。ちゃんと保険分は残しておいたんだな。
そんな時、二人の後ろで動かないナカオカ。
両替で日本円を全て両替してしまったのかと土屋先生は・・・
土屋先生:大丈夫だナカオカ、ちゃんと二人分の保険代位は日本円で残してあるぞ。
ナカオカ:加入するんすかね?
土屋先生:・・・ん?どういう意味?
ナカオカ:いや、俺 加入しない気満々だったんだけど・・・
予想外のナカオカの言葉に絶句する土屋先生。
タツノリ:お前・・・さすがにそれはまずいよ。なんかあったら死んじゃうよ?
ナカオカ:そーかー・・・死んじゃうかぁ・・・まぁいっかなぁ・・・
土屋先生:いやいやいやいや、それは俺がまずいから加入して。
ナカオカ:しょうがないなぁ・・・
そう言って保険加入の紙を手に取るナカオカ。
ちなみに、保険料は加入する会社によってかなり違う。
今回は総額で6000円程度だったのだが・・・
カウンターのおねぇちゃん:そちら保護者の方ですか?
土屋先生:・・・まぁあんまり保護しないけどそのようです。
おねぇちゃん:・・・あ・・・そうですか・・・ええとですね、保険のかける方は成人の方でないといけないのですが。
土屋先生:はーい、名前書けばいいんですね。書きますよ。
結構適当な調子の土屋先生。
土屋先生が名前を書いていると・・・
おねぇちゃん:若い方なのでもう少しお安い保険に加入できますがいかがでしょうか?
おねぇさんが提示した金額は5000円を切る値段だ。
死亡に対する保障が少なめなのだか、傷害保険は十分な額が保障されている。
土屋先生:こいつらの命安いんで一番安いのでOKっす。
タツノリ:えー!!
土屋先生:大丈夫だ、お前らが死ぬようなことにはならないだろうし、その場合僕が先に死んでるはずだから、後を気にする必要はない。そういう意味だと思っとけ。
タツノリ:うーい。
釈然としない顔のタツノリだが、安く済むのならそれにこしたことはない。
ナカオカも乗っかる形で保険に入る。
ちなみに保険に入った後で判明したのだが、この保険は未成年のみでも入れないことはないらしい。
未成年の方々には朗報であろう。
そして時間が迫ってきたこともあり、3人は出国審査前のセキュリティチェックへ。
係員:お客様、荷物を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?
ナカオカが引っかかってしまったのだ。
ナカオカ:・・・いいですけど・・・あっ!!
係員:・・・どうかしましたか?
ナカオカ:・・・みますか?・・・見ちゃいますか?
係員:仕事ですので。
ナカオカ:・・・みますかぁ・・・
不振なナカオカの態度に、係員のお兄さんはかなりの不信感を持った模様。
そして・・・
ナカオカのポーチから出てきたのはひらひらのメイド服だった。
小さなポーチの大部分を占めるメイド服。
気まずい雰囲気が漂いまくる。
ナカオカ:えーっと・・・もういいですかね
係員:あ・・・はい・・・どうぞ・・・もういいんで。
ちなみにそれを見て土屋先生とタツノリは大爆笑である。
タツノリはこれを見越してメイド服をナカオカに持たせたのだろうか?そうだとしたら友情にひびが入りまくりな今日この頃である。
さて、セキュリティチェックを無事に抜けた一行は一路ラウンジへ。
もともとシャワーと軽食が目的であったラウンジの使用は、ここにもう一つ現地(カンボジア)の情報収集というなにを今更という感じの目的を加えていた。
タツノリ:・・・じゃぁナカオカ、イロイロ調べてくるから適当に待ってて
ナカオカ:わかったぁ。んじゃ適当にうろうろしてるから
そう言ってナカオカを置き去りにし、ラウンジへと入る二人。
今回使用するのはスカイクラブ。
成田でのそれの規模は世界でも有数である。
特にアメリカではラウンジ自体が非常にしょぼいことが多いのだが、どこの航空会社も成田ではかなり気合が入っている。
簡単なスナックがあるのは当たり前として、アルコールやヌードル、肉に寿司(のようなもの)までおいてある。
枝豆もおいてあるので、ビールとあわせていただくと幸せな今日この頃だが、もちろん土屋先生は二人の保護という目的からアルコールの摂取を自粛・・・してなかった。
土屋先生:おそらく台北では長い夜になるだろうから、僕は飛行機に乗ってすぐに寝るからね。
そう言って生ビールをグラスいっぱい空ける土屋先生。
もともとビールが嫌いな土屋先生がわざわざ嫌いなビールを飲んでまで飛行機の中で寝ようとするということは、おそらく台北での非常な困難が待ち構えているということなのだろう。
もちろんそれには気付かずに、黙々とカンボジアだかなんだかの情報を・・・特に役に立たない情報を集めているタツノリ。
正確には、役に立つ情報になる前の部分までしか調べる時間がなかったのではあるのだが・・・
ちなみに今回、ラウンジのシャワーは故障中で、別のラウンジまで移動すれば使用できたはずだったのだが、二人は結構ぎりぎりになってからシャワーを使用としたために今回はアウト。
なかなかに前途多難な旅であるのだが、彼らの苦難はまだまだこれからである。
そして今回は、ターミナルから直接飛行機に乗ることが出来ず、飛行機のあるところまでゲートからバスでの移動であった。
結構ぎりぎりまでラウンジにいた土屋先生とタツノリはナカオカと合流した後、ファイナルコールで名前を呼ばれる寸前でバスに飛び乗る。
バスに揺られること約10分、三人はタラップをのぼって機内へ。
こうして何とか無事、機内に乗り込んだ3人であった。
タツノリ:いやーもう前菜でおなかいっぱいって感じッスよ。
土屋先生:・・・前菜?
タツノリ:はい♪
土屋先生:前菜ってのはこれから行く台北だと思うのだけど?
余裕をかまそうとしたタツノリに非常な追い討ちの土屋先生、タツノリの顔が一瞬青くなる。
土屋先生:席は非常口席だから足元は十分に広いはずだ、しっかりと英気を養っとけよ。
タツノリ&ナカオカ:ういーっす!!
土屋先生:もちろん入国審査と現地(台北)での行動は考えてあるんだろうからな、じゃあ僕は機内食が出てくるまで寝てるから。
そう言ってさっさと寝てしまう土屋先生と、台北でのことを考えて青くなるタツノリとおき楽な調子のナカオカ。
やっと旅が始まったようである。
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