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SYU's TraveLog.
登録08.03.21
9日目・ダイジェスト
朝起きて、特にすることもない二人(観光など当初の計画にはまったく存在しない)は、とりあえずベトナムの現状を把握するために、旅行代理店と銀行を回ることにした。
その国で発券する航空券はそのままその国の物価を反映し、銀行で外国人(彼らのことだ)が口座を開けるかどうかで、経済がどの程度開放的であるかがわかる。
ちなみに日本の証券会社は、日本に住所をなくした人間(移住など)の口座を凍結してしまうところもあるらしい。
恐ろしいことだ。
朝飯を探しに行きながら最初に見つけたのは旅行代理店である。
ローマまでドバイ経由の往復のチケット、それもビジネスクラスが2,200ドル(約22万円)程度だ。
距離がいくらか近いとはいえ、日本で50万円以上するチケットが半額以下というのはすばらしい安さだ。
もしも日本でビジネスクラスでヨーロッパにいけるチャンスがあったら、ぜひベトナムに寄ってから行くことにしようという話をする二人。
ちなみに塾から予算が出る限り、そんな仮定はありえないのではあるが。
無駄に夢を膨らませた二人は、『フォー』という米でできた面を昼食にし、一度ホテルに戻ってから銀行へと向かうことにする。
二人が今回向かうのはCitiBankとHSBCだ。
CitiBankはアメリカ系、HSBCはイギリス系の銀行で、世界で1・2を争う大手銀行である。
もちろんそのどちらも日本に支店を持っている。
ガイドブックのない二人は、ホテルのフロントの女性に場所を教えてもらい、口座の開設するために必要なものと、どのようなサービスが受けられるのかを確認しに行くのであった。
特にサービスの質の高さで有名なCitiBankへと向かう二人。
しかし、現在ベトナムのCitiBankでは『個人向け』のサービスを提供しておらず、またその予定も今のところないのだという。
最近問題になっているサブプライムローン問題、CitiBankはアメリカに本社があるので、そのせいで個人向けのサービスが停滞してるのだろうか?
ちなみに、CitiBankのATMはベトナムに2台しかない。
使えなさ爆裂である。
次に二人が向かうのは世界最大の銀行という触れ込みのHSBCである。
ここでは個人向けの口座は作ることが出来るようであったが、ベトナム国外のファンドと、ドル預金しか出来ないとのことだった。
ベトナムに住んでいない場合には現地通貨での預金も出来ない。
たとえベトナムに住んでいても、ベトナムの株もファンドも扱えないというのである。
口座が作れるだけましであるが、それでもぜんぜん足りない。
いくらかの失望を胸に歩く二人は、2日前に会ったヒロさんに再び出会った。
バッグをひったくられた彼である。
「目をつけられるやつはとことんやられるよねー」
などとお気楽にヒロさんのことを語る二人。
と、その3時間後。
レストランで態度LLでねっころがるヒロさんを発見する二人。
屋台で飲んだアイスコーヒーにダウン系の麻薬か何かを混ぜられてしまったようなのだ。
睡眠薬強盗の手口である。
幸い何も取られてはいなかったのだが、本人は体に力が入らずに起き上がることも出来ない。
ヒロさんを自分の取ったホテルに運び込む土屋先生。
抗生物質を飲ませしばらくベッドに寝かせておくのだが、それでも回復しないヒロさん。
本人の希望もあり、ベトナムの病院にタクシーで移送されるヒロさん。
頭痛と手足の痺れをしきりに訴えている。
病院に着き、担架に乗せられるヒロさんだが、順番待ちでなかなか診察してもらえない。
呼吸困難のような症状を見せるヒロさんは苦しそうに担架上でのたうちまわる。
20分前後待ってからやっとドクターが診察に来る。
「とりあえずは酸素吸入して、後はCTスキャン。それでOK?金額は100ドルちょっとだよ。ドルじゃなくてドンで払ってね。」
そう言いながら酸素吸入器を用意するドクターだが、実はヒロさん、オーバーベンチレーション(過呼吸症候群)だった。
この場合に酸素吸入などしてしまうと体が痙攣を始め、そのまま死に至ることもある。
呼吸困難と過呼吸症候群の見分け方は簡単だが、海外の病院にいくときは注意したほうがよいだろう。
土屋先生によると、その見分け方は「指先」だそうだ。
「指先が白くなっていると過呼吸症候群」らしいのだが・・・まぁ所詮は素人。読者の方々は各自確認しておくといいだろう。
ちなみに過呼吸症候群に陥っている患者を見つけたら、とりあえずビニール袋か何かを頭からかぶせてあげよう。
そうすることで酸素濃度を低下させて患者の状態を落ち着けることが出来る。
CTスキャンの順番が回ってきて、ドクターがその準備に入ったのだが・・・なにやら注射される模様。
さすがに海外でよくわからないもの(医療レベルがわからないとそう見える)を注射されるのは怖かったらしく、全力で拒否するヒロさん。
水分の補給と排尿を繰り返すことで徐々に病状が回復していく。
「記念撮影しましょう」
などとのたまわる程に回復したころだろうか、彼らは病院を追い出された。
再びタクシーでホテルへ移動する。
もちろん担架から自力で起き上がれないヒロさんは土屋先生にお姫様抱っこされて移動だ。
ヒロさんをしばらくベッドで休ませた後、立ち上がれるようになったヒロさんをつれて彼ら(というか土屋先生)は夜の屋台に繰り出すのだった。
「いやぁ、はずさないねぇ君も!!」by土屋先生
上機嫌の土屋先生ともうおなかいっぱいな感じの光君。
本日の一番のネタを手に大喜びの土屋先生だが、ヒロさんからしてみれば不謹慎な男である。
世話をしてもらった手前それほど文句は言わないが、彼の心中はいかほどのものだったか・・・
みんなで(実はこのほかに二人の日本人が巻き込まれていた)乾杯をした後、長かった夜は終わるのだった。
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