アメリカ旅行記 (準備〜初日)

 

卒業旅行ってことで、企画したアメリカ旅行。

あちらに渡る前から、ゴタゴタの連続・・・至れり尽せりのトラブルトラベルでした。



学生生活最後の卒業旅行。

卒業研究で一杯一杯だった自分としては、適当にグアムとかサイパン辺りにでも行って、手軽に済ませようかとか考えていたのだが、友人Mが、叔父がロサンゼルスに住んでるので、そこで厄介になれば宿代も浮いてお得だ・・・とか言い出したのが、今回のアメリカ旅行のきっかけである。

出発は三月の中頃。
メンバーは俺と、MとWの三人。
Mの叔父さんの家を拠点にして、一週間ちょい程グルグルまわるみたいな感じである。

卒研で多忙だった俺らは、出発の五日前になってからようやく準備を始めた。
ここら辺からして、既にどっか間違ってた感はあるなぁ。

まずは航空券の手配。
貧乏学生な俺らは、当然ながら格安航空券を探す。

まぁ、ロスとの往復切符なら6〜7万ってとこか・・・と踏んでいた俺。
ところが、ヤフーの旅行カテゴリで検索をかけてみてビックリ。

27000えん

おーい、アメリカだぞ? 国際線だぞ? 10時間以上もお空を飛んで27000ってなんだそれは?
下手な国内線のほうが、よっぽど高い。

あまりの安さに『墜落』の二文字が頭をかすめる。
ところが他の二人は大喜び。

M「おおっ! ちょー安いじゃねーか! ラッキ〜!」

W「わ〜・・・旅費が浮くね。助かったよ」

おまいら、安けりゃいいんか?

激安の理由・・・長い間、9.11等のテロが関連してたんだろうとか考えていたのだが、どうやら行き来してる便の数で決まるみたいだね・・・需要と供給か。

俺の不安をよそに、その代理店にTELする二人・・・が、

売り切れ

さすがに五日前じゃこんな馬鹿安航空券は残ってない。
やれやれと、内心一人一息つくのも束の間。

M「ちくしょー・・・こうなったら、安い順に片端からかけまくってやるっ!」

以後、奴らの戦歴・・・

27000 SOLD OUT
28000 SOLD OUT
28000 SOLD OUT
29000 SOLD OUT
30000 SOLD OUT
30000 SOLD OUT
31000 SOLD OUT
32000 SOLD OUT
33000 SOLD OUT
34000 SOLD OUT
34000 SOLD OUT
36000 SOLD OUT
36000 SOLD OUT
38000 SOLD OUT
38000 BINGO!

もはや執念を感じさせますな。

当初の予定(あくまで奴らの)より11000程高くはなったが、それでも格安には違いない。
空港税、保険料込みで約5万円となった。ちなみに航空会社は大韓航空。

出発日は日曜。日付変更線の関係で、向こうに着くのも日曜(ここ大変重要)。

あとは各々で準備を行う。
どこまわるか等は、向こう着いてから考えようってことで落ち着く・・・計画性の欠片もありませんな。

航空券代の振込みも発券も終わり、出発まで三日・・・・・となったところで第一トラブル発生。

昼頃、Mから電話がきた。

M「・・・すまん。叔父さんの家で病人が出たらしい。今、来られるのは非常にまずいって・・・」

・・・・・・・・・・

まずいって・・・そりゃこっちの台詞だ。
発券済みの航空券がキャンセルできないのは常識。

今更、宿なんか取れるわけない。
第一取れたとしても、代理店で取れるクラスのホテルとなると、予算の関係で一週間借りられない。

借りられるクラスの宿といえば、MOTELとかユースホステルになるが、英語がパッパラな俺らにとっては、ある意味、高級ホテルよかよほど敷居が高い。
いや・・・でもそれは片言でなんとかなるとは思う。問題は移動手段。
当初、俺らはレンタカーを借りてぶらつく予定だった。アメリカはガス代安いし、高速もタダである。貧乏旅行にはうってつけの乗り物だったのだ。が、その件について我々の親連中が猛反対。

「事故ったら誰が責任取ることになると思ってんだ! 海外で車ぁ? 百年早いんじゃボケ!」(BY うちのオカン)

・・・とまぁ、左様な感じで凄まじい反対のされ方をしていたのを、あくまでその叔父さんとこを拠点に構えて、車による移動は最小限に抑えるってことでようやく納得させたのである。
ところが今回の拠点消滅により、

「話が違ぇだろうが! 却下っ!」

・・・てな具合となったわけだ。

欠片も計画を立てていなかった俺らは、バスや電車による移動だと最低限度の英語力が必要となる。
きっぱりと自慢にならないが、俺のTOEICの点数ったら、そりゃあもう凄いから・・・ある意味。

え? 英語しゃべれなくても、なんとかしてしまう奴はいくらでもいるって?
俺ら小心者の小男集団なのよ。

八方塞がりな状態。
このままでは、なけなしの5万円がドブに沈むことになる。

俺とWは、それでもなんとか行けないもんかと思考錯誤していたが、Mは完全に意気消沈。
もう旅行なんかどうでもいいって感じである。

なんとかならんもんかと、打開策を考えていて、ふと一人の知人を思い出す。

Tさん。
海外旅行にもしょっちゅう行かれる、かなりの旅マニアだ。
一人でヨーロッパを、一月以上も放浪してくるくらいの人で、英語も堪能である。

Tさんが来てくれれば心強い。
またもや他力本願な俺だったが気にするべからず。

駄目もとで電話してみるが、あっさりオーケーしてもらえた。
ただし今は金がないそうで、宿代は俺らで負担することになる。

詳しく話せば、色々と複雑且つ有機的な事情があったのだが・・・結果的に、Mの航空券を半額で譲るという形で、TさんがMの代わりに来るということで落ち着いた。

それで解決かと思いきや、その後も二転三転して、行く行かないで散々揉めまくったのだけどね。
もはやそれについては書く気も起こらんが、前日の夜になってようやく行くことが確定する。

しかしまぁ当初の予定とは随分と異なった旅行になったものだ。

一日目

時差ボケ対策で徹夜したため激眠い。
(後になって気付きましたが、あまり意味がないかと思われます)

さっそく空港へ向かう・・・前に行くところができた。
浅草橋のユースホステル協会である。そこで国際学生証なるものを発行してもらえるらしい。

国際学生証があれば、簡単な身分証明となるだけでなく、学割なども効いて非常にお得なのだそーな。

浅草橋駅前で合流。
TさんとWは初対面となるが、二人とも気さくなので・・・まぁ問題あるまい。

それぞれの服装

Tさん
洗面用具と下着、そしてPDA一式の収まった小型のリュック型バッグと、首から下げたデジカメ。本当に必要最低限のみ・・・さすがに旅慣れていらっしゃる。


予備の着替え、洗面用具と下着、ノートパソコンとデジカメの収まった、そこそこ大きいリュック型バッグ。まだまだ無駄が多い。

W
何が入ってるのか知らんが、おっきな肩掛けと、巨大なボストンバッグ。あなたそれをずっと持ち歩き続けるおつもり?

Wの荷物の大半は、成田に着いたら即行、宅配で自宅送り決定。

そんなこんなで会館に着き、さっそく発行手続きをする・・・が、Wが作成用の写真を持ってきてなかった。
適当にその辺で撮ってこようするW・・・が、それをTさんが止める。

T「まぁまぁ、しばし待たれよ」

とかなんとか言いつつ、何をするのかと思いきや、突然バッグから小型プリンタを取り出すTさん。
その後、表に出て、壁をバックにデジカメでWの顔写真を撮ると、それをその場でプリントアウトして作成用の写真を作ってしまった。

これはまた、実に用意のいいことで。

なにはともあれ、国際学生証を入手。
さっそく成田へと向かう。
上野から京成線で、一時間ちょい程揺られて来ましたるは新東京国際空港。

さっそくWの荷物でいらなさそうな物を、肩掛けに詰め込んで自宅へ送り飛ばす。

その後カウンターでチェックインを済ませ、時間まで、地球の歩き方読んで、マック行って飯食って、便所行って、ダベって過ごす。

出発まで一時間をきったので中に入る。ノーパソ等が入っていたため、荷物検査に引っかからないか心配だったが問題なっしんぐ。

搭乗までの待ち時間、Wは保険入ってないため、損保ジャパンに加入。一週間ちょいで4000円。
ちなみに俺はVISAカードの学生加入だったため、海外保険は自動的に加入済みとのこと・・・ビバVISAカード。
TさんはJCBカードによる自動加入だそーな。

時間になりましたのでいざ搭乗。
座席番号確認のために、手持ちのチケットを見て凍りつく俺。

42番

さすがは格安航空券。
それ以下はあっても、それ以上は決してありませんな(泣)。

T「はっはっは・・・まぁ気にすることなんてありませんよ」

ポンと肩を叩くTさん。

ト「? そりゃどういう意味です?」

訝しげな表情で聞き返す俺に対し、Tさんはニッコリ微笑むと、

T「どちらにしろ一瞬で済みますから(ニコッ)」

ト(激泣)

・・・何はともあれ離陸。

機内にて

徹夜したため、ひたすらに眠かった俺は即爆睡・・・しようとするも、席が狭いため思うように寝つけない。

さすがは格安エコノミー
それ以下はあっても、それ以上は(以下略)

ようやくウトウトしかけたところで、起こされる・・・食事だ。

ビビンバだった。
そういやこれって韓国の航空会社なんだよな。

激辛いのは・・・まぁ我慢しよう。味覚など人それぞれだ・・・が、しかしだな。
あの見るからに怪しげなチューブからブチュ〜っと出して、味付けさせる仕組みをなんとかせいやコリアン。

食事が終わって、少し経ってからようやく眠る。

何時間か経過し、二度目の食事。
ビビンバの印象が強すぎて、そん時の食事はなんだったか忘れた。

それが終わってから一時間ほどで着陸態勢に入る。
降りた瞬間、機体が大きく揺れるも問題なし。

さぁ着きましたアメリカ。
LA国際空港の感想・・・なんか成田に比べてきちゃない。

入国審査の審査官は黒人のおばちゃん。
機内で書いた・・・なんたらカードを渡すと、早口で何か喋る。

お「ほにゃらら〜ら、ほにゃほにゃ、ぱーぽす?」

何を言ってるのかさっぱり分からんが、何を言いたいのかは概ね理解できた・・・多分。
パーポスは目的・・・つまり『おまえ何しに来たんだ?』ってとこか。

適当にツアーだのトラベルだのと言ってみるが『わかんねぇよ』みたいな面される。
いいや、貴様分かっててやってるだろう。

慌てて後ろからTさんが来て『Sightseeing』と答えて、あっさり終了。
ちなみにWは、俺の方を指差して『Same』の一言で済ませやがった・・・・・おのれW。

次にTさんだが、なんかやたらと長かった。なにやら険悪な雰囲気。
どうやらTさんはビザを取っていて滞在可能期間が長いため、指紋と顔写真を撮らなければならないらしい・・・9.11の影響か。

その時の会話

おばちゃん「ほらほら、早くここに手ぇ置く」

T「ふぅ・・・俺、こういうのすっごい嫌いなんだよね」

おばちゃん「なら帰る?(すっごい冷めた目で即答)」

T「あ・・・いや、嫌いなだけであって、拒否してるわけじゃないから」

おばちゃん「なら早くしな・・・後ろがつかえてんだから」

あっさりと流してくるあたり、さすがアメリカン。
ぶつくさ言いながらも、指紋と写真を撮るTさん。

その後、税関通過して入国。
とりあえず空港出て、ロス市街へ向かおうとバス停探しに・・・
む? そーいや何か大事なことを忘れてないか?

やべぇ・・・金だ。ほとんど円だよ。
手持ちのドルは、Tさんが元から持ってた200ドルのみ。

俺らは慌てて、空港内の両替所へと向かう。
両替担当は色黒のおばちゃん。

T「ヘイおばちゃん・・・一万円両替したら、手数料込みで何ドルになる?」

おばちゃん「76ダラーズ(涼しい顔で)」

T「・・・・・・・・・・はい?」

おばちゃん「76ダラーズ!(少し怒った声で)」

2004年3月現在、円高が急激に進んでいたため、1ドル110円前後と、大変お得なはず・・・だったのだが・・・

100*(100/76)=131.6

いや・・・俺らが飛行機乗ってる10時間の間に、レートが20円近くも上昇したんですか? そりゃすごい。間違いなく本日のトップニュースだな。

んなわきゃねぇだろーが

つまるとこ、手数料がベラボーに高いのだ。
うわーい、ボリボリだーい・・・・・っていうか、舐めるなLA国際空港。

諸般の事情により、どうしてもこの場で270ドル必要だったため、仕方なしに一万円だけ両替。
他は、適当な銀行でも探して両替しようということになった。

空港内移動用無料バスに乗って空港を出る。
手持ちの残金が10ドルちょいしかなかったため、相当に心細くはあったが、ボッタクリ両替所にこれ以上寄付してやるのも癪なので、このまま出発。とりあえず、ダウンタウンのリトルトーキョーへ向かうことになった。

空港を出たところでバス乗り換え。ここからは先は金がかかる。財布が相当に軽いので運賃が気になるところ。
あれこれと話し合っていると、一人のおっさんが話しかけてきた。なんか日本語喋ってます。
(元?)日本人だった。翻訳の仕事をされているとかで、かれこれもう10年以上もこっちにいるらしい。
親切なおっさんに、色々と情報提供して頂いた上、両替までしてもらった・・・サンクスおっさん。

なんでも一日バス乗り放題券『デイパス』なるものが存在するらしい。しかも一人たったの3ドルである。
300円ちょいでロス中のバスが乗り放題だ。どっかの日のつく国の、ボッタクリ企業共にも少し見習って欲しものだ。まぁ車検なしやらガス代安いやらってのも関係してるんだろうけど。

そんなこんなでバスに乗り、市街地に向けて出発。
さすがに安いだけあって、バスはかなりオンボロで落書きだらけだった。そこら中、汚い英字でスラング尽くしだ。
んなもん見てても、ちーとも面白くないので、走行中は、ひたすらに窓から外を眺める。
アジアを離れたことのない俺にとっては、何もかもが新鮮な景色ばかりだった。

で・・・だ。途中で、妙な違和感を感じ始めた。まぁ海外なんだから、違和感あって当たり前なのだが。
日本ではあって当たり前の何かが、全くないことに気付いたのである。

自販機だ

おっさんの話によると、自販機なんて置いとくと、一晩で自販機ごとパクられるのだそうだ。
やれやれ・・・犯罪大国アメリカの名は伊達じゃないってことですな。

ところで、さきほどからTさんが外人のお姉様方とクッチャベってます。英語なんで、何話してんのかさっぱりワカメ。
Wはといえば、ポカンとした表情をしながら横で話を聞いている。

皆さん学生らしい。俺らとそう大して歳も変わらないのだろーが、妙に老けて見える。
何人かいたが、俺的には手前にいた赤毛の子が一番好み・・・・・あーいや、んなこたーどーでもいいんだ。

Tさんが喋れ喋れと振ってくるが、いきなりなんで何を話せばよいものやら・・・結局何も喋れず終いだった。
きょとんとするお姉さん・・・すると、Tさんが俺の方を指差して一言。

T「SHY BOY」

なんかやたらとうけて、一同そろって爆笑していやがりましたな。
・・・Tさん、殴ってもいいすか?

その後、懐から何かを取り出すTさん・・・赤いハンカチだ。
妙に怪しい手つきで、いろいろといじると、手からハンカチが消えてしまった。
いきなりの手品に、場が大いに盛り上がる。この他にもトランプや、素通りリングなどを披露するTさん。

以前、ルーマニアへ行ったときに、現地の子供達に見せたら大好評だったらしく、以後、手品にハマリまくっているのである。
でも俺は横にいて、けっこう恥ずかったり・・・シャイボーイなもんでね。

そんなこんなで、一時間ほどしてユニオンステーションの前・・・ダウンタウンの外れに到着した。
ユニオンステーションとは、アムトラックなる大陸横断鉄道の駅である。
飛行機の国内線がメジャーになり潰れかけたらしいが、国からの援助で辛うじて生き延びたらしい。

列車の発車時刻確認のため駅に入る。建物のつくりや雰囲気が洒落ていて、大変素晴らしかった。


こんな感じ

発車時刻は、夕方の18時以降。
現在時刻は10時を少し過ぎたばかり・・・まだまだ時間がある。

とりあえず金がないので、両替するために銀行を探すことになった。
地球の歩き方片手にリトルトーキョー周辺をうろつく。


ダウンタウンを散策中の図

・・・・・で・・・・・だ。
このときになって、とんでもないことに気づいた。

開いてる店がねぇ

街中なんで店などいくらでもあるが、どこに行っても閉まってやがる。
時刻は10時過ぎ。
いくらアメリカ人が時間にルーズな連中だとしても、ここまで開店が遅れることはあるまい。

ふと気づいたようにつぶやくTさん。

T「・・・・・そうか・・・・・今日は日曜日だったんだ」

アメリカはキリスト教の国。
キリスト教といえば、日曜は大事な大事なお祈りの日・・・というわけだ。

無論、銀行も閉まってます

困ったときの神頼み。
今日はお祈りの日らしいので祈りましょうか・・・

おお・・・神よ・・・間抜けな我らを救いたまへ・・・(血涙)

まぁそれはさておき、どうしたもんかと悩む。
一度空港に戻って、例のボッタクリ両替所で替えてもらうという案も出たが、けっこうな金額を替えなければならないので、損失が大きすぎるということで却下された。

そんなこんなで相談しながら歩いていると、リトルトーキョーの真中付近で、いくつか開いている店を発見した。
さすがは日本人・・・商売熱心だね。

なお余談だが、街中を歩いていると5〜6人のオバハン集団に出くわした。
見るからに日本からの観光客である。
オバハンズは、近くにあった寿司屋の前に来ると、

オバハンA「あった、あったよ。お寿司屋さんだよ」

オバハンB「お寿司かぁ・・・いいねぇ・・・じゃあここにしよっか」

とかなんとか言いつつ、ゾロゾロと中に入る。
あのな・・・一言いわせて頂きたい。

お前ら一体何しにアメリカまで来たんだ?

寿司なんざ日本でいくらでも食べられるでしょうに。

その後適当なとこに入り、両替できそうな場所がないか聞いてみる。
すると、近くのビデオ屋で両替してもらえるというではないか。

すぐさまそのビデオ屋へ向かう。
目の前まで来て、ちょ〜っと引く俺ら。


思わずシャッターをきる

いや・・・円両替についてはいいんだけどさ。問題は赤文字。

なんか『日本AV女優 ウラ売』とか堂々と書かれてあるんですけど。
一応確認しておきたいのだが、ここ大通り沿いよ?

か〜なり抵抗感はあったが、背に腹はなんたら・・・中に入る。
しかし、中は意外と普通な感じだった。少し薄暗いが、まぁ一般的なビデオ屋って感じだ。

カウンターの中にいるのは、ロンゲの兄ちゃん。
とりあえず、両替できるかどうか聞いてみる。
すると、なんでも今はドルがあまりないそうで、夕方にもう一度来て欲しいとか言われた。

仕方ないので、表に出てどうするか議論。
このまま両替可能な場所探し続けるのもなんか不毛なので、せっかくデイパス買ったのだから、適当にバス乗ってふらついてみようかということになった。

まさしく適当なまでに、どこに行くかも分からないバスに乗って移動開始。
あとになってから、こっちのほうがよほど不毛かなぁとか思ったり。

バスに乗って移動すること十数分。
リトルトーキョーから大分離れ、なんとなく住宅街チックなところまでやってくる。

斜め前方にスーパーらしきもの発見・・・というわけでバスを降りてみる。
ここは『スパニッシュ村』・・・つまるとこスペイン人の多く住む町だ。

なぜスーパーなんぞにやって来たのかというと、実は両替については半ばあきらめていたので、ATMを探していたのである。
というのも、Tさんが香港でつくった『CITI BANK』のキャッシュカードを持っていたので、とりあえず金下ろして後ほど精算しようというわけだ。

スーパーの入り口にATM発見。
さっそく下ろしてみる・・・が、ブーッと鳴って拒否られる。

仕方なしに、近所のコンビニやらなんやらを、手当たり次第に廻って試してみる・・・が、全てボツ。

詳しい原因は不明だが、カードの更新で、新しいカードへの引継ぎやらなんやらのため使用不可なのではないか・・・とのことだった。
さすがにこれはTさんも予想していなかったようで、徐々に表情が曇る。

適当な店で聞き込みしたり、公衆電話から日本にかけてTさんの親父さんに助言を求めたりと、いろいろやってみるが全て空ぶる。

途中、長距離電話プリカを買った店の店員親子から、ペットボトルをもらったりもした。なんか俺らの現在の境遇に同情してくださったようです。人情が身に染み渡る思いでした・・・いやマジで(泣)。

余談だが、歩きまわっていてむかついたことを一つ。

歩行者信号変わるの早すぎだ。
日本でいうところの青信号が、ひでぇ時なんざ1秒ともたずに点滅しはじめる。もの凄まじくせっかちな国だね。

まぁ、それはさておき金がない。
いや、違うな・・・・・金はあるんだ、しかしドルがない。

ほとんど八方塞がりな状態になってから、ふとVISAカードのことを思い出す俺。

このカード・・・・実は、俺の姓名の「つ」の部分を、パスポートと同じ・・・つまりヘボン式の「TSU」ではなく、「TU」で登録してしまうという、天文学的大チョンボをしてしまったため、海外での買い物では使用不可能な役立たずカードだった。

だが、カードと暗証番号だけ分かってれば下ろせるATMならば使用可能かもしれない。

恐る恐る試してみると・・・・・ビンゴだ。

ガコンガコンスガガガガガ・・・と鈍い音をたてて金・・・じゃなくてマネー・・・いやクレジット・・・これも違うな・・・多分、キャッシュがでてきた・・・Tさん合ってます?

ついつい『三井住友VISAカード!』・・・と、中山エミリの如く唱えたくなる。
さすがはパスポートセンターの真横で登録受け付けやってただけのことはありますな。

学生登録なため、限度額は日本円にして月10万。
旅行では10万ぽっち、アッと言う間になくなる。今後何があるか分からんので、必要最低限のみを下ろした。

得るモノ得たので、リトルトーキョー行きのバスに乗る。
なんだかんだで戻る頃には四時過ぎになっていた。

若干早いような気もしたが、例のビデオ屋へ行ってみることにした。

向う、着く、入る。
するとカウンターの中に午前中にはいなかった男がいた。
サングラスをかけた男で、ロンゲの兄ちゃんよか、当社比30%程怪しさの増した男である。

さっそく両替可能かどうか聞いてみると、あっさりオーケーしてもらえた。
しかもレートもかなりよさげだ。全額替えることはできなかったが、けっこうな金額を両替してもらえた。

ベリーベリーサンクス、怪しい兄ちゃん。
怪しいだなんて言ってしまって御免よ、怪しい兄ちゃん。

十分な金額とは言えないが、そこそこに懐も温まってきたのでユニオンステーションへ向う・・・・・前に、近くにあったモバイル機器専門店に向う。
Tさんが海外専用の携帯電話を持っていたので、はぐれた時のために使用可能状態にしておこうというのである。

この携帯電話、日本におけるプリペイド式携帯に似た感じのシロモノで、プリペイドカードの代わりに、SIMカードなるモノで課金して使用するというものだった。
店のおっちゃんは日本人だったので会話は日本語だったが、『T−モバイル』だの『シンギラー』だのと、ワケのわからん話をしまくるTさん。

理解できた話の中で一つ面白い話があった。
なんでもアメリカでは、Eメールのシステムが、日本より少なくとも1〜2年は遅れているのだという。
・・・と言うのも、アメリカ人はメールなんぞ使わず、何か用事があればすぐに直接かけてしまうからなのだそうだ。故にEメールの需要がさほどなく、結果、発展が遅れるというわけである。

使わなければ成長せず・・・頭と同じですな。
日本におけるEメールの進歩の早さは、日本人特有の恥じらい、及び、奥ゆかしさ所以というわけだ。

SIMカードは携帯二つ分で70ドル。
通話可能時間は片方30分・・・・・緊急用としては十分すぎる程の時間だ。
携帯は二つあったので、俺とWが一つずつ持つことになった。

ユニオンステーションに着く頃には、辺りはかなり暗くなっていた。
時刻は六時ちょい前・・・まだ少し時間がある。

なんだか酷く腹が減ったので、食いモン探してブラつく。
そーいやなんだかんだで機内食以後、何も食べてないよーな気が・・・

駅から少し離れた路上で、ネイティブな感じのバーサンが・・・何かパンのようなものを焼いて売っていた。
あまり時間もなかったので、夕食はこれで決定。
一つ2ドルのところを、三つで5ドルにまけてもらった。

夕食も確保したので、切符を買いに駅のカウンターへ向う。
受け付けは・・・なんとなくしたたかそーな感じのするババア・・・って言うか、アメリカ人って6〜7割方こんな感じだよな。

国際学生証を提示して、学割きくかどうか聞いてみるが、あっさり拒否られた。
これは後ほど聞いた話だが、学生という立場が通用するのは、発展途上国など、学生の少ない国に限られるのだそうな。

あと切符購入に際し、身分証が必要だという。
俺らは国際学生証持ってたから、あれでオーケーだったが、通常はパスポートなどを渡さなければならないので、かなり抵抗感がある。

次の目的地はグランドキャニオン。
グランドキャニオンへは、フラッグスタッフで車に乗り換えて向うのだが、グランドキャニオンで帰りの切符は購入できないということで、ここで一緒に往復分を購入する必要があった。
三人分で合計百ん十ドルばかし。

予想外の出費によって財布が一気に軽くなった。いつの間にやら20ドルきってます。
発車時刻が迫っているので、そのままホームに向う。
仕方無しに、フラッグスタッフに着いてから銀行探そうということになった。

アムトラックの感想
なんか、トラックを大型化したような感じかな? 日本ではまず見ないタイプの列車だ。
全ての車両が二階建てなので、けっこうな高さである。

車内はかなり綺麗で広かった。
地方の一部で走っていそうな、新型の特急みたいな感じだ。

何はともあれ座席、もとい寝床を確保。
まぁ、座席は相当に余裕がある感じだったので焦る必要はなかったのだが。

椅子を変形させて簡易ベッドのような感じにする。
座席二人分で、二畳くらいの広さになった・・・大人一人が横になるには十分な広さだ。

乗車してから五分も経たないうちに発車する。
ホームを出て徐々にスピードを上げてったところで・・・

ガコン!

と、大きな音をたて、列車が揺れて急停車する。

何だ何だと、乗客がざわめく。
しばらく停車した後、車内アナウンスが流れた。

なんでも一人乗り遅れた客がいたため、一度駅に戻るとのことらしい。

ありえねぇ
日本ならば絶対にありえねぇ

このあたりの大らかさ・・・というか、大雑把さはアメリカ人の長所なのやら、はたまた短所なのやら。

ガコンと鳴って、再び列車が動き出し駅のホームへと戻っていく。
ホームに入ってから一分も経たないうちに再び発車。

ちなみに、乗り遅れたというお間抜けさんは、俺らのすぐ御近所にやってきた。
よれよれのスーツ姿で、なーんか疲れた感じのする中年リーマンという感じだ。

なんだかその日はひどく疲れたので、パン・・・もどきを食べ終えると、そのまま寝た。

ちなみにこのパンもどきだが、めっちゃくっちゃに辛かった。
それこそ火ぃ吐けそうなくらいの辛さだ・・・いやマジで。

さて明日は、今回の旅行のメインたるグランドキャニオンである。

 

(二日目に続く)

 

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