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2日目・Pontorsonへ到着・・・しかし・・・
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登録07.09.26
2日目・Pontorsonへ到着・・・しかし・・・
ポンターソンが見えてきた。

徒歩であればまだまだでも自転車で走ればあとちょっとの距離。

光君はそろそろ体力の限界のようだ。

しゃべる余裕もない。

そしてその光君を後ろからじっと観察する一対の目。

『この状態の光君にどれだけの負荷をかけることができるのか?』それを見極めようとする土屋先生。

土屋先生の選択肢には、このままパリに向けて自転車というものもあったのだが、さすがにこの状態ではそれもできない。

そして・・・人は余裕を無くすと冷静な判断を下すことができなくなるものらしい。

この時点で光君には『予定通りにすべてが進む』以外のことが考えられなくなっている。

まずはPontorsonの町外れにあった地図を確認し、わき目もふらず駅へ向かって移動を開始する。

後ろでは土屋先生が地図を見ながら最悪の事態が発生したときに次に向かうべき道を確認している。

最悪の事態とは・・・

Pontorsonからの移動手段が発見できなかった時である。

土屋先生自身は体力に十分な余力を残してはいるが、団体行動(2人だけど)では他の人間をおいて移動するわけにはいかない。

この町に留まるか?それとも他の町へ行くか?

土屋先生の脳が更なる選択肢を求めて活動を開始する。

ポンターソンの車道は狭く、自転車で走るのは危険だ。
しかし、歩道はところどころ段差があり、気をつけて走らないとすぐにパンクをしてしまいそうだ。おのずと視線は目の前の地面に釘付けになり、それは神経を磨耗させ、さらには周囲からの必要な情報収集能力を著しく下げてしまう。

そんな土屋先生の心配をよそに光君はパンクを気にせずガコガコ走る。

土屋先生の頭に自転車を破棄する場合の行動オプションが追加されていく。

光君の疲労度合いと思考能力の低下に対して、土屋先生の選択肢はどんどん狭まっていく。

『現時点で彼に可能な行動は?彼の能力で見えるもの、収集できる情報、どうフォローすればどう行動させられる?』

そして同時に土屋先生も追い詰められていく。

彼も日本で100%の情報収集をしてくる時間がなかったのだ。この先の移動手段を彼も完全に把握してはいない。

『たしかこの町にもユースホステルがあったはずだが・・・』

そんな土屋先生の目にAuberge de Juenesseの看板が。

Auberge de Juenesse・・・フランス語でユースホステルのことだ。

ユースホステルとは、いわゆるドミトリー(寮)タイプのホテルだ。一泊20ユーロ程度で泊まれるが、鍵などがついていない場合も多くセキュリティーの面で不安がある。しかし、通常のホテルなどとは違い、ひとつの部屋に多くの旅人が集うのが一番の特徴である。旅人たちとの情報交換や友情を育むのが非常に容易なこの宿は、土屋先生がもっとも好むタイプの宿でもある。

・・・安いしね・・・

こっそりユースホステルの位置を確認し、すこし余裕の戻った表情で光君の後を追う土屋先生。

そして・・・光君にとって本日最悪のトラブル(失敗)が。

二人はフランス国鉄SNCFの駅へとたどり着いた。

光君はよどみない動きで駅の窓口へ。

以下光君フィルタ

「おいおっちゃん、こっからパリまで行きてーんだけどよ。」
「○×△□○○××・・・」
「え?なに?」
「・・×△□××○○・・・」
「わけわかんねーって、何言ってんだよおっちゃん、パリだよ、パリ!!」
「・・・□××○・・・クアトロ・・・○×△□○・・・」

「英語くらいしゃべれろよ!!」

うーん、昨日と比べると格段の進化だね光君。
すごい上から目線で駅の窓口のおっちゃんを罵倒する。
昨日は(ってまだ二日目なのか)日本語くらいしゃべれと言っていた光君が今は英語くらいと言うまでになるとは。

「光君、俺が話してみるよ」

土屋先生助け舟を出す。

「ちっ・・・つかえねーな、このおっさんは!!」

「・・・エウ・ソシリ・パリス・プレカレ・アイチ・・」
「・・・×△□○○×・・・××△□○□□・・・クアトロ・・・デ・・・」

土屋先生と駅員との間でしばらくギリギリ(ほとんど通じていない)の会話が続く。

そして首を振る駅員と、困った顔の土屋先生。

「・・・どうだった?ツッチー?」
「4時間後だ。」
「・・・え?」
「電車は4時間後まで来ない。Dol行きもパリ行きも来ない。」

そのやり取りを聞きながら窓口でめちゃめちゃうれしそうに首を縦に振りながら指を4本立てる駅員。意思が通じたのがそれほどうれしかったか?

「どうするんだよ!!」

すごい勢いで土屋先生に罵声を浴びせる光君。

「だから来る時自転車なんか使わなければよかったんだ!!そうすればこんなことはなかった!!絶対帰りの電車の時間とか確認したのに!!」

止まらない光君、肉体的な疲労もあるのだろうか、彼にしては珍しく土屋先生に食ってかかる。

「・・・俺が悪いのか?」

静かに光君に問う土屋先生。その目は怒りも喜びも感動も表れていない。

「そうだよ!!ツッチーが自転車で行くって言ったからこんなことになったんだ!!」

顔を赤くして土屋先生に詰め寄る光君。

「・・・では君には何の落ち度も無く、すべて完全にこなした上で、僕がこの事態を引き起こし、すべての責任は僕にあるというのだね?」

すこし目を細くする土屋先生、しかしその目は怒りではなく諦めと哀れみが含まれている。

『お前のせいですべてが狂った。全部おまえがわるいんだ!!僕は最初から嫌だったんだ、それなのにお前が僕を無理やり・・・だから僕は何も悪くない』

「・・・うん」

すこし間をおいてうなずく光君。

その姿をみて大きく息をつき、次の言葉を搾り出す土屋先生。

「・・・わかった。ではそれでいい。認めよう。それで?この事態は打開できるかい?」

「無理!!絶対無理!!もう今日中にパリに着くのは無理だよ!!」

断言する光君。

『このままじゃレンヌにもたどり着けないかもしれない。レンヌにたどり着けたとしてもまたあの宿に止まったらお金が・・・でも俺は悪くない、全部ツッチーがやったんだから!!』

土屋先生を見る光君の目は、人が罪人を見る時のそれであった。

「わかった。ここは僕が何とかしよう。」

「そうだよ、そうしてよ。」

ため息をつきながら光君から目をそらす土屋先生と、土屋先生を凝視する光君。土屋先生は光君から目をそらしたまま最後の確認をした。

「・・・本当に、100%僕が悪いんだね?」

「そうだよ!!そういってるじゃん!!」

その言葉に何の疑いも抱いていない光君。
それを横目で確認し、ため息をつきながら気分を切り替える土屋先生。

「よかろう、まだできることがあるのを見せてやる。」