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4日目・もうすぐベネチア
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登録09.04.30
4日目・もうすぐベネチア
「光君携帯出してみな。」

ミラノからベネチアに向かう列車の中、先ほどの騒動から一息ついて土屋先生が光君に声をかける。

「ん?いいよ。」

光君が取り出したのはNokia7600という名のフィンランド製の携帯電話だ。葉っぱのような形をしているので通称『葉っぱ携帯』

今回はこの携帯電話に香港のSIMカードを入れて、緊急の場合の連絡をとるように、土屋先生が光君に貸したものだ。

SIMカードについてはいずれどこかで解説するとして、なぜ香港のものなのか?

それは、プリペイド式だからである。

日本の携帯電話では、通話料でいくら使用しても青天井に課金されてしまうのだが、プリペイドであればその心配はない。

特にインターネット経由のE-mailなどを送受信するときに、巨大な添付ファイルなどが付属していた日にはもう目も当てられない。一瞬で千円単位の課金をされてしまう。

「携帯の画面見てごらん。」

「ん・・・ボーだフォンと・・・ヴェローナ?ってなにこれ?}

光君が携帯の画面を見ると、Vodaphone IT という表示のほかにもVeronaという表示が出ている。

「それは今いる場所の地名だ。最悪、それを見れば大体の自分の位置がわかる。」

「へー・・・そうなんだ。ってツッチー、もうバッテリーがないよ。」

「よし、それじゃあ予備バッテリーに交換だ。」

「うん」

・・・・・・・・・・・

そういってしばし固まる二人。先に口を開いたのは土屋先生だった。

「・・・あの・・・光君、予備バッテリーは?」

「は?そんなのもらってないけど」

「・・・」

「・・・」

そう言って再び固まる二人。


土屋先生は大きく息を吸い込み・・・ゆっくり吐き出しながら搾り出すような声で言った。

「光君、身体検査だ。全部出せ」

「え?」

「ほら。ポケットの中から何から全部出すんだよ。」

「だって俺持ってない・・・」


有無を言わさぬ口調で光君の前に手を突き出す土屋先生。

しぶしぶポケットの中のものを取り出す光君。

するとその中から予備バッテリーが・・・


「光君、これは何だね?」


予備バッテリーをつまんで光君に言う土屋先生。


「よび・・・ばってりです。」


ばつが悪そうに言う光君。


「あ、ツッチー、ほらほら、携帯ホルダー壊れてるよ。」


話題を変えようと、話をそらす光君。

自分の腰につけた携帯電話ホルダーの留め金が壊れているのを発見したのだ。


「・・・」


土屋先生の目が語っていた。『それはな、君の腹の肉によってねじまげられてしまったのだと思うのだよ』と。

かぶりをふって何も言わなくなる土屋先生。

顔が少し疲れている。

ちょうどそのとき、隣の座席に座っていた乗客が席を立った。

向かい合いに座っていた二人は、二人で4席占有して広々足を伸ばし始める。


「おお!!ツッチー、これいいわ。リクライニングする!!」


広々と座席を使えて喜ぶ光君。


「夜行列車とかだと、これがフルフラットになったりするんだ。」


遠い目をして言う土屋先生。

昔痛い目にあったのを懐かしんでいる様だ。


「・・・お前もやるか?・・・」


ボソッと口にした土屋先生。

目が笑っている・・・が、光君はそれに気づいていない模様だ。

それから一時間、たっぷりくつろいだ二人は、ミラノでトイレに収納された自転車を取りに行った。

ベネチアへの上陸準備だ。

微妙にばっちぃものを取り出すような手つきで自転車を取り出す二人。

本日はベネチアに滞在する予定だ。

・・・が、光君はベネチアのユースホステルの場所を知らない。

二人が自転車の準備をする中、二人を乗せた列車はベネチアとイタリア本土を結ぶ橋の上を走っていた。

美しい水の都ベネチア。

その美しい水の都は・・・牙を剝いて光君を待ち構えているかもしれない。