|
登録08.03.25
3日目・3時間待機
駅に戻った時点での時刻は午後5時40分。
駅の電動掲示板(?)で列車の出るホームを確認し、さらに実際のホームもその目で確認しに行く光君。
初日の教訓が生かされているようだ。
ずらーっと並ぶベンチの中から適当な場所を選んで夕食を取ることにする光君。
ナイフを二本もらってはいたが、さすがに箸として使用するには無理があったようで、手づかみで食べる光君。
「・・・光君?」
土屋先生の声にびくっとなる光君。
「な・・・なに?」
恐る恐る振り返る光君。
「そこの緑色のものはどうするのかね?」
土屋先生が言っているのは野菜のことだ。
「・・・廃棄します。」
「ふーん・・・そう。そうかぁ・・・いやまぁ良いのだけどね。」
このとき土屋先生はこのときのことを特に光君の記憶に残るようないやらしい言い回しをする。
おそらく、土屋先生は『光君の予算が尽きる』のを狙うと同時に、後で『その原因追求』と称して光君をいじめる(教育する)つもりのようだ。
土屋先生は買ってきたハンバーガーを二つと、フランスパンを3分の1ほど食べる。
それぞれの食事が終わったのは6時を少し回ったころだった。
電車の出発までまだ3時間以上余裕がある。
「さて、光君。この後どうしようか?」
「ここで待ってる。」
「・・・ん?」
「どこかに行って迷うとやだからずっとここで電車を待ってる!!」
結構強い口調で言う光君。
「・・・つまり3時間何もしないで、ただただ無作為にここに座っていると?」
「そうだよ、どっか行って何かあったらいやだし!!」
ふぬけ具合にも程がある。
安全が欲しいのならば家から一歩も出なければ良いのだ。
「ふーん・・・じゃあ僕は駅の中でも歩いているよ」
そう言ってそれ以上は何も語らない土屋先生。
そうして光君は無為な3時間を過ごしたのだった。
ちなみに土屋先生は、イギリスから来たという親子相手に手品を披露していた。
サービス精神旺盛というよりは、『動いていないと死んでしまう』タイプの人なのかもしれない。
魚で言うとサメとかその辺りの生き物だろう。
本人に言わせると、『常に何かを学んでいる』つもりらしいのだが、どこまで本気かはわからない。
無事に電車がくるまでの時間を浪費した二人は、いくらか疲れた顔で電車に乗り込む。
自転車は折りたたんで通路においておく。
そして乗り込んだ列車にはきちんとした寝台が装備されていた。
シャワーに入れないことを除けば特に問題はないはずである。
ちなみにそのシャワーが浴びれないことで土屋先生はかなりのストレスを溜め込んでいるのだが、それは光君の考えの及ばぬところである。
野宿どころか、民家に転がり込むことすら平気な顔で出来る土屋先生の唯一の弱点がこの『シャワー欲』だろう。
二日も風呂に入れないと、彼はトイレの洗面台でもシャンプーし始めてしまうというこらえ性のなさがある。
もちろんそのために体もふけるナプキンのお化けみたいなものを装備してはいるのだが、それでもやはりお湯のシャワーにはかなわない。
ちなみに、リヨン駅には公衆シャワーがあるのだが、一回に10ユーロ以上の料金がかかる。
特に夜行で移動することも多いヨーロッパの鉄道事情である。
探せば(有料の)シャワー程度いくらでも見つかる・・・が、予算に限りがある場合、そう頻繁には使えないだろう。
明日は無事にシャワーにありつくことが出来るのだろうか?
そんな二人を乗せて、夜行列車は満点の星空の下ニースへと向かうのだった。
|
|